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『富士山は噴火するの?』富士山噴火の専門家に聞きました

「富士山は噴火するの?」「噴火したらどうなるの?」

山梨・静岡県民のみならず、関東都市部に住む方にはとても気になる疑問かと思います。

そこで、富士山噴火の可能性や防災について、山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センター長の吉本充宏さんに教えていただきました。

吉本充宏さん(山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センター長)
吉本充宏さん(山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センター長)

----富士山は噴火しますか?噴火するとしたら、いつ噴火しますか?

いずれは噴火すると思います。いつ噴火するかは予測するのがとても難しいです。人がいつ風邪をひきますか?いつがんになりますか?と少し似ています。同じことをしても病気になったりならなかったりするので。

----10年以内に噴火する確率は?という質問も、やはり難しいということですか?

そうですね。明日噴火するのと10年後噴火するのは、火山にとっては実はそんなに変わらないんです。
人間のサイクルと富士山のサイクルは、だいたい1万倍違います。たとえば人間のサイクルが100年だとすると、火山は100万年のサイクル。人間の1年が火山では1万年に相当すると考えると、彼ら(火山)からすると、数千年がたった1年といったところです。

地震というのはプレートが一定の速度で動いているので、ひずみが一定の速度で溜まって地震で解消するという周期が認められます。でも火山は、プレートの運動によってマグマが生成されるわけですけど、生成されてから上がってくるまでにいろいろな過程があり、一定の周期を見い出しにくいんです。

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実際、富士山はこれまで10万年くらい活動していますが、10万年間同じ活動を繰り返しているかというと実はそうではなく、10万年前から2万年前までは結構大きな噴火を繰り返していました。その時期はある意味、怒りっぽかった。その後、富士山は山自体が崩れるという大きなケガをした。そのあと、山頂の火口から溶岩をだらだら流すような噴火をしていましたが、最近2000年間は山頂の火口を使わないで、裾野に噴火口を作るようになって今に至ります。

また人に例えますが、幼少期があって青年期があって壮年期があるように、富士山も時代ごとに成長を遂げてきたんです。

----富士山は300年噴火してないと聞きました。それも変化の一つということですか?

そうですね。一番最後の噴火は1707年、今から315年くらい前に起きた宝永大噴火です。
奈良時代〜平安時代、西暦1100年くらいまでは頻繁に噴火していたのに、そのあとの噴火は記録に残っているのはその1707年を含めて3回だけ。とびとびになっています。そして、ここ300年は噴火せず、お休みしてしまっている。なぜ300年間噴火していないのかは実はよく分かっていないのですが、今は富士山の活動の状態が新しい状態へ移り変わっている過渡期なのかもしれません。

----このまま噴火しないということはありますか?

それはないと思います。なぜなら富士山の地下15kmほどにあるマグマ溜まりに動きがあるからです。それは今は噴火に至るような大きな変化ではありませんが、「深部低周波地震」といって地下深部のマグマと関連して起こるとされる地震が発生しています。だから、活動が完全に止まるとは思っていません。

----300年間噴火していない分、次の噴火の規模は大きくなることは想定されますか?

統計的にはそういうことはあり得ます。
間隔が長くなると、下に溜まるマグマが多くなって、次の噴火が大きくなるというのはよくあることです。実際、噴火と噴火の間の期間が長くなると比較的大きな噴火になる、というのは世界の火山で統計としてあります。

ただ、大きな噴火に至る前に小さな噴火を繰り返すケースも考えられ、突然大きな噴火が始まるとは限りません。

----予兆についてお聞きします。その宝永噴火では、一ヶ月前から群発地震が起こったり山の方から鳴動が聞こえたという記録があるそうですが、次の噴火もそのような予兆がありますか?

マグマが動くので、それなりに予兆は得られると思います。ただ、一ヶ月前かどうかは分からない。たとえば伊豆大島の1986年の噴火や三宅島の1983年の噴火では、マグマが火山の下で動き始めて地震が起こったんですが、その地震から2時間で噴火しました。

実は、宝永の噴火は特殊な噴火だったので、どこまでが予兆だったのか判断が難しい所があります。噴火の49日前に宝永の大地震が起こっていて、そのあと余震が続きました。直前の1日、2日というのは噴火に伴う予兆の地震と考えていいと思いますが、それより前の地震が大地震の余震だったのか噴火の予兆だったのか、記録だけからだと判断が難しいんです。

もう一つ、宝永の噴火が特殊だったのは噴出した岩石の成分でした。富士山は山肌に赤い石や黒い石が多く見られますが、あれは基本的に玄武岩で、ハワイの火山に近いさらさらしたマグマからできています。ところが、宝永の噴火では一番初めに粘性の高いマグマからできた白色の軽石が噴出しました。デイサイトという安山岩と流紋岩のあいだくらいの組成のマグマが固まった岩石です。

これはどういうことかというと、比較的浅い位置にデイサイトのマグマがあって、それはおかゆのようにドロドロの状態で、そこに下から高温でさらさらの玄武岩のマグマが上がってくるのを栓のように止めていました。やがてデイサイトが温められて爆発的な噴火が起こると、後に続いて玄武岩のマグマが吹き出しました。それが宝永の噴火です。それまでの富士山の噴火とは毛色が違ったんです。

先ほど鳴動と言われましたが、デイサイトが動くときは玄武岩が動くときより予兆現象がいろいろ起こると言われています。たとえば、有珠山(うすざん)の2000年の噴火ではデイサイトが噴出しましたが、3日くらい前から地震などの予兆が見られました。粘り気の強いマグマが噴火する前は予兆が早めに現れやすいんです。

一方、玄武岩の噴火だと、伊豆大島や三宅島の噴火がそうだったわけですが、予兆から噴火まで2時間とか短くなりやすいのです。

----ということは、富士山が噴火する場合、もし安山岩・流紋岩のマグマが噴出するなら予兆は早めに現れる可能性が高い、玄武岩のマグマが噴出するなら予兆は直前かもしれない、ということですか?

そうです。宝永の噴火はまずはじめにデイサイトのマグマが噴出するケースでした。だから予兆が得やすかった可能性があります。

----御嶽山のように予兆がほぼゼロということはありますか?

マグマが動くので、そういうことはないと思います。数時間かもしれないけど、なんらかの予兆は得られると思います。
噴火には大きく二つのタイプがあります。御嶽山や草津白根山のようにほとんど予兆なしに水蒸気噴火する火山と、マグマ自体が動いて噴火するタイプです。前者は人間で言うとくしゃみのような感じで、直前まで分からないのですが、後者はマグマの動きに伴いなんらかの予兆があることが多いです。富士山はマグマが動く噴火なので、噴火前に予兆が観測される可能性が高いです。

ただ、マグマと水が接触すると、富士山でも御嶽山に類する現象が起こらないわけでもない。でも、それはマグマが動いたあとのことなので、マグマの動きを観測していれば、ある程度は噴火することを予測できると思います。

----東日本大震災の地震(3.11)の4日後に、富士山周辺で震度6強の地震が起こりました(静岡県東部地震)。この地震が富士山噴火になんらかの刺激を与えた可能性はありますか?

静岡県東部地震が富士山の噴火やマグマの活動に一定の影響を与えた可能性があります。
まず、静岡県東部地震は火山がなにか動いての地震ではなく、東日本大震災の地震(正確には、東北地方太平洋沖地震)に誘発されて起こった可能性があります。次に、東日本大震災の地震が富士山の噴火に直接的な影響を与えたかについてですが、基本的にその可能性は少ないと考えていいと思います。

東海、東南海地震についても、富士山から遠い南海の方で大きな地震が起こっても、富士山の噴火にそんなに影響はないのではないかと思います。一方で、富士山に近い東海の方でマグニチュード8以上の地震が起こると、富士山の噴火、マグマ活動に影響があるかもしれません。

実際に、東海、東南海地震は平安時代以降も一定の周期で起こってきたのに、富士山の噴火は平安時代以降まばらに起こっている事実を見ると、大地震が起こると必ず富士山が噴火するわけではないことがわかると思います。

----富士山噴火ハザードマップ改訂で、想定火口範囲や避難対象エリアが拡大され、市街地への噴火の影響や避難方法が見直されました。これについて具体的に教えて下さい。

まず、溶岩流が3時間以内に到達する『第3次避難対象エリア』が新設されました。このエリアにいる人は、入所者など要支援者の場合は噴火前に避難を始め、一般住民は噴火が始まってから徒歩で安全な場所へ避難することになりました。これまでは、車による避難とされていましたが、徒歩での避難が原則となった点が改正のポイントです。

一方、『第1次避難対象エリア』、『第2次避難対象エリア』は、想定火口範囲であったり、火砕流、大きな噴石が届く範囲で、噴火してからの避難では遅いエリアのため、噴火する前に避難します。改訂でこの2つのエリアも広がりました。

※付近の住民は必ず改訂されたマザードマップを確認してください(以下は2023年1月時点)。

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----第3次避難対象エリアの一般住民は噴火後、つまり溶岩が流れ始めてから避難ということですが、少し怖い気がします。大丈夫なのでしょうか?

溶岩はゆっくり流れるので歩いても十分逃げられます。

私もイタリアやハワイの火山で溶岩流の数メートルそばまで行ったことがありますが、歩ける人なら大丈夫です。足の悪い方などは早めに避難すべきです。

火山災害で大事なことは、噴火してからでは間に合わない事象に対しては噴火前にしっかり避難し、噴火後でも対応できる事象に対しては噴火後に落ち着いて避難することです。予兆が起こっても噴火しなかった、マグマ上昇の兆候が観測されても実際に噴火しなかったケースがたくさんあるためです。住民の生活や地域経済のことも考えて今回の計画が作られています。

噴火してからでは対処できない大きな噴石と火砕流のエリアだけ噴火前に逃げておいて、溶岩流は全方位で逃げなくていい、というのが新しい避難計画の考え方です。
富士山が噴火すると富士山全域で避難しないといけない、というイメージをどうしても持ってしまいますが、火口が分かればその周囲を中心とした避難となります。

富士山ハザードマップのドリルマップで、火口ごとに溶岩流が到達する可能性のある範囲が分かります。

----地元住民に、富士山噴火時の対応や噴火現象の理解を深める出張講義を行っていると聞きました。

はい。どこから噴火したら、どこが災害範囲となるから、どこに逃げればいいか、このマップで住民や子どもたちに教える授業をしています。たとえば、ここで噴火したら吉田の人だけ避難すればいいとか、筋状に流れる溶岩流に対して横に逃げればいい、ということを立体模型の教材を使って教えています。

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溶岩流を正しく知るための学校教材

これが溶岩流を正しく知るための学校教材です。もしここに火口ができたら溶岩はどこを流れるか?子どもたちにまず予想してもらいペンで書き込みます。そのあと実際にシャンプーなどとろとろした液体を溶岩に見立てて流して、実際に流れた筋を確認してもらい、どう逃げれば安全かを感覚的に理解してもらいます。

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正確な地形を反映した模型なので、溶岩の実際の動きを理解できる

----噴火した場合、ガラス質の成分が含まれる火山灰が東京など都市部にも広く降り積もると聞きます。噴火後の対策や今できる備えはありますか?

防災グッズや食料の用意など、地震や風水害の防災対策とほぼ一緒でいいと思います。

それに加えて火山灰が降る状況では、マスクやゴーグルを用意しておくと良いと思います。マスクがその場になかったら、ハンカチを口に当てることも有効です。

一番大事なのは、火山現象についての正しい知識と知恵です。自分のいる場所と噴火する場所の距離・方向によって災害の大きさは変わります。同じ方向にいても距離が変わると影響の度合いが違います。同じ距離にいても角度が変わると影響の度合いが違います。これをちゃんと理解しておくことが大事です。自分がどこにいて、どの火山現象がどこで起こっているのかをちゃんと把握する能力を持っておくことで、火山災害からはかなり身を守れると思います。

----吉本さん、どうもありがとうございました。




富士山はいつ噴火するか分かりません。しかし、富士山の火山現象と災害対策を正しく知れば、過度に恐れる必要はなく、正しく恐れることができるということが分かりました。富士山噴火で影響を受ける地域にお住まいの方は、以下の情報についてもぜひ参考にして下さい。

富士山ハザードマップ(山梨県)
富士山ハザードマップ(静岡県)
富士山が噴火したらどうするの?①全体版(山梨チャンネル)【youtube】
降灰への備え 事前の準備、事後の対応(独立行政法人 防災科学技術研究所)
大規模噴火時の首都圏における降灰の影響と対策(中央防災会議 防災対策実行会議 大規模噴火時の広域降灰対策検討WG)

取材:ヒノキブンコ

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