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TENJIN Factory~織物の産地からMADE in JAPANリネンブランドを世界へ

織物の名産地、富士吉田で70年。
布団の側地からネクタイ、そしてリネンへ

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千年以上の歴史を持つ織物のまち、山梨県・富士吉田。豊かな湧水と養蚕文化に支えられ、独自のテキスタイル産業が育まれてきました。人口減少や需要の変化が押し寄せる中、リネン専門のファクトリーブランド「TENJIN Factory(テンジンファクトリー)」は、この地の織物文化を受け継ぎながら、暮らしに自然と馴染むリネン製品を丁寧に作り続けています。

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手がけるのは、1940年代から富士吉田市で三代にわたり織物産業を営む有限会社テンジン。かつては毛皮コートの裏地やネクタイ生地を100%OEMで生産していた同社が、リネンの世界へと舵を切ったのは2000年代になってからのこと。三代目の小林新司さん(以下:小林さん)は、欧州で親から子、孫へと受け継がれてきたリネン文化に触れ、その魅力に深く惹かれたといいます。

「大学を卒業してすぐ家業に入りました。当時はネクタイが製造の主力でしたが、10年ほど経過した頃、妹が趣味で集めていたヨーロッパのアンティークリネンを見て、その素材の柔らかさや風合いに驚きました。確信があったわけではありません。ただ、何もしなければ地場の繊維業は衰退してしまう。新しいものに挑むしかないという一念でした」と小林さんは振り返ります。

富士吉田でただひとつ、リネンを紡ぐTENJIN factory

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フラックス(亜麻)という植物の繊維から作られるリネン製品。夏は涼しく、冬は重ねて暖かい。使うほどに肌に馴染み、吸水性が増していきます。その一方で、かつては帆船の帆や消防用ホースに使われていたほど丈夫で、長く使える素材でもあります。日本でまだリネンがあまり知られていなかった2000年、同社は「ALDIN(アルディン)」という女性向けのリネンブランドを立ち上げ。2006年、もっと多くの人にリネンの魅力を届けたいという想いから、誰でも手に取りやすいブランド「TENJIN Factory」をスタートさせました。
商品の確かな品質はもちろん、ナチュラル志向やサステナブルといった現代の価値観にも寄り添い、根強い人気を集めています。

ゆっくりと丁寧に織る、「セルヴィッチリネン」へのこだわり

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カタカタとリズムよく織機の音が響く、老舗の織物工場ならではの少しひんやりとした空気感の中、工場に入ると小林さんは手を止め、「これがうちの生命線です」と語ります。指さすのは、旧式のシャトル織機。この機械ならではの魅力は、伝統的なセルヴィッチリネンを織ることができる点にあります。セルヴィッチとは日本語で「耳」のこと。ヨコ糸が何百、何千というタテ糸の間を抜け、布の両端で折り返されて繋がることで一枚の布ができ、その両端に現れる耳こそがセルヴィッチです。

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「昔はどこの織物会社でもセルヴィッチが当たり前でした。でも時代とともに効率化が進み、今ではほとんど見られなくなりました。正直、生産効率は良くありませんが、現代の機械では出せない独特の風合いがあるんです。今ではシャトル織機のメーカー自体もなく、修理できる職人も地域に80代の方がわずか2人だけ。それでも、アンティークリネンが持つストイックさや懐かしさ、趣を大切に、あえて昔ながらのシャトル織機で布を織り続けています」と小林さんは語ります。

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生地の素材には、人体に有害とされる化学物質を含まないエコテックス認証を受けたヨーロッパ産原料のリネンを、海外から輸入。富士吉田では古くから、糸を先に染めてから織る「先染生地」を用いて布を作ってきました。熟練の職人は、その先染糸のテンションや織るスピードを微妙に調整しながら、糸本来の風合い、わずかなムラや凹凸を生地に刻み込みます。そうして生まれる生地は、ひとつとして同じものがない個性を持ち、ふんわりと柔らかく、それでいてしっかりとした質感。触れるたびに、糸のぬくもりが伝わってきます。

工場に隣接するファクトリーショップ。
一生使いたいと思える本当に良いものを世界に届ける

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ブランド誕生から約20年。いまでは日本国内はもちろん、アジアを中心に MADE IN JAPAN ならではの細やかなつくりが評価され、少しずつその名が広がりつつあります。工場に隣接するショップ兼ショールームでは、実際に「TENJIN Factory」のカーテンやベッドリネン、タオルなどを手に取り、その肌触りや風合いを確かめることができます。

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「私たちだけでなく、地域全体として後継者の問題を抱えています。明確な答えはまだ見つかっていませんが、まずはこの土地に根づくハタオリの歴史や、織物そのものに興味を持ってもらうことが大切だと考えています。そこで地域の約15軒のハタ屋さんと協力し、毎月第3土曜日に工場を開放する取り組みを続けています。これまで日本の暮らしに寄り添うものづくりを大切にしてきましたが、世界中の人に "ずっと使い続けたい" と思ってもらえる、長く愛される商品をつくっていきたいです」と小林さんは語ります。

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糸を染色する素材に、糸の太さや密度、タテ糸とヨコ糸の交差の仕方を組み合わせることで、無限の表現が生まれる織物の世界。「最近は、年齢を重ねるにつれて、よりナチュラルなものに惹かれるようになりました」と小林さんは、藍染めや柿渋染め、麻炭染めといった天然染色のアイテムを前に語ります。
その自然体な表情からは「TENJIN Factory」というブランドに注ぐ深い愛情と、素材と向き合いながら心からものづくりを楽しむ少年のような純粋さが伝わってきました。

Article written by VALEM co., ltd.

TENJIN Factory
山梨県富士吉田市下吉田7丁目29-2
※詳細は下記URLを参照してください。
https://www.tenjin-factory.com/
Instagram :tenjinfactory

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