デュアルユース問題って知ってる?

デュアルユース問題って知ってる?

デュアルユース問題を知っていますか?

あまり聞き慣れない言葉ですが、研究者の間では、科学技術と安全保障をめぐる根本的な問題として長年議論されてきました。

私たちは日々、便利な技術に囲まれて暮らしています。しかしその技術は、使い方次第で人を助けることも傷つけることもできる「二面性」を持っています。

ここでは、デュアルユース問題についてご紹介します。

デュアルユース問題とは?

デュアル(dual)は「二重の」、ユース(use)は「用途」、デュアルユースの直訳は「二重の用途」です。デュアルユース問題とは、ある技術や知識が「平和・民生目的」と「軍事目的」の両方に使えてしまうこと、また、それに伴うさまざまな倫理的課題のことです。

※⺠⽣(みんせい)⽬的:⺠間の⽣活、⼀般社会の国⺠⽣活で使われること
※軍事⽬的:戦争や犯罪で使われること

デュアルユースの有名な例はGPSです。GPSはもともと軍事用に開発された技術ですが、今ではスマホ位置情報やカーナビ、物流システムなど私たちの生活に広く使われるようになりました。他にも以下のようなものがあります。

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技術そのものに「善」や「悪」はありませんが、使う目的によって「良い利用」にも「悪い利用」にもなってしまいます。そのコントロールが非常に難しい、ということになります。

多くの技術がデュアルユース化する

ほとんどの技術はデュアルユース化し、AIや量子技術など革新的な技術ほど、この傾向が強くなると言われています。人の暮らしを大きく変えうる技術は、同時に大きく破壊する力も持っているからです。

そして、どれほど多くの研究者や組織が、「この技術を軍事利用しない」と決めて厳格な規制を設けたとしても、技術の拡散を防ぐことは非常に難しいのが現実です。大学の研究室や民間企業が、純粋に人類の利便や幸せのために論文や技術を発表しても、それがやがて人々を脅かす兵器となっているケースは以下のものを例として多くあります。

ダイナマイト:ノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルは、建設現場の安全のためにダイナマイトを発明しましたが、すぐに兵器に使われるようになりました。

AI技術:Google社のAI研究者たちが、米国国防総省の軍事用のドローン映像解析プロジェクト(Project Maven)への協力を「兵器開発に加担したくない」と強く拒否し、同プロジェクトの契約非更新やGoogle社の「AIに関する原則」の策定につながりました。しかし、世界的に見ればドローンやAI技術は現在兵器に応用されています。

研究者の「善意」だけでは防ぎきれない構造的なリスクが、デュアルユース問題の本質と言えるのです。

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なぜ、技術はデュアルユース化するか?

なぜ技術はデュアルユース化してしまうのか?それは、新しい技術によって「できること」が生まれた瞬間、同時に「やるべきこと(善用)」と「やるべきではないこと(悪用)」という2つの選択肢が生まれるためです。

「やるべきこと=善用」で、「やるべきではないこと=悪用」という価値観が、どんな状況においても絶対的に変わらないならいいのですが、厄介なのは、それが時と場合によって変わることです。

「人を殺傷する技術」は当然「やるべきではないこと」です。しかし、自国が他国に攻め込まれる状況では、防衛のための技術転用は正義に変わります。 

実際に、世界で初めて核兵器を開発したプロジェクト(マンハッタン計画)では、従事した科学者たちの多くは、「ナチス・ドイツが先に原爆を完成させたら世界が終わる」という切迫と正義に突き動かされていました。 

「デュアルユース」と聞けば2つの用途が明確に分かれているように思えますが、実はその明確な線引きは不可能です。これが、デュアルユース問題を哲学的な問いへと押し上げています。

実は近年、技術のデュアルユース化が加速しているという指摘があります。ソフトの汎用化やデータ処理の高速化、インターフェースの進化によって、生活品と軍事品が少しの仕様変更で転用可能となっているケースが増えています(市販ドローンが攻撃用に使われる等)。

デュアルユース・・・その余白を残すことは進化の原動力?

デュアルユースはリスクである一方で、技術の応用・転用に余白を残すことが社会の進化を促進してきた、という見方もあります。

悪用は決して許されることではありません。しかし、歴史を見ると、軍事的切迫や戦時中という状況が技術の限界を突破させ、それが後に民生利用として社会を大きく進化させてきたのも事実です。核技術やインターネット、ジェットエンジン、レーダー技術がその例です。

技術の民生利用と軍事利用が原理的に分離できない以上、責任ある管理をいかに継続的に実現するかが、デュアルユース問題の長年の議論の中心でした。

一方で、AIを手にした今、便益を最大化しつついかにリスクを最小化するか?戦争など強い期限を介さずに、いかに技術の進化を加速させられるか?その知恵を人類は持つようになるかもしれません。

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私たちの心にもあるデュアルユース

私たち一人一人が持っている言語や能力もまたデュアルユースと言えます。

言葉:人に優しい言葉をかけたり、気持ちを伝えることができる。一方で、一言で相手を傷つけることもできる。

知識:人に教えたり、問題を解決することができる。一方で、人を騙したり支配することもできる。

SNS:自分の考えや感想、作品を世界の人に伝えられる。一方で、誹謗中傷もできる。

デュアルユース問題は、私たちの心の中にも存在しています。でも、私たちは日々、小さな選択を繰り返し、「できるからやる」のではなく、「やるべきか、やるべきでないか」で判断しています。少なくとも自分の中のデュアルユースは自分で決められますね。

 

以上、「デュアルユース問題って知ってる?」でした。

written by ヒノキブンコ

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