農家レストラン 紡~畑から食卓へ。ベーストヨトミの野菜を滋味豊かな料理で味わえる場所
旧豊富村。シルクの里に、古民家農家レストランがオープン
甲府の中心街から車で約30分。甲府盆地の南に広がる中央市関原には、どこか懐かしい田園風景が広がっています。”シルクの里”として、江戸時代から昭和初期にかけて養蚕で栄えた「旧豊富村」。今も集落のあちこちに、その歴史を感じさせる建物や風景が残っています。
穏やかな里山の一角にあるのが、ゲストハウスに併設された「農家レストラン 紡」。年間70~80種類の野菜を育て、収穫体験や県内外の飲食店への卸しも行う観光農園「ベーストヨトミ」が、2026年1月に開いたレストランです。
築200年の養蚕建築の中に入ると、2階部分やその他の棟を蚕室として使っていたことから、大規模な養蚕農家だった面影が今も感じられます。古い梁や柱を残した空間には柔らかな光が差し込み、ここで紡がれてきた暮らしの時間に自然と思いを馳せてしまいます。1階の入り口部分はレストランフロアとして、1階奥と2階は最大14名が宿泊できるゲストハウスとして運営されています。
畑から食卓へ。滋味溢れる料理。野菜をもっと楽しく、食べるたびに新しい発見を
平日も予約で満席になることも多いという「農家レストラン 紡」。料理を手がけるのは、京都で約20年腕を磨いた金子シェフです。「ベーストヨトミ」で育てた旬の野菜を中心に、自家製麹やシロップを使いながら、煮る・焼く・炊くといった多彩な技法で素材の持ち味を引き出します。
明治時代の養蚕道具を生かした大きなお盆で提供される「つむぐ定食」は、運ばれてきた瞬間に思わず歓声が上がるほど。蒸してから炙った甘みのあるケイルに、カラシナのほのかな辛味と自家製チーズを合わせたサラダ、紅芯大根の炊き込みご飯、クリスタルポークのみぞれ餡がけなどが並びます。甘味・酸味・辛味のバランスが意識された彩り豊かな副菜は約10種類。小鉢の内容は野菜の収穫のタイミングによって変わり、畑の“今”をそのまま味わえるお膳になっています。
食後には、甘さを控えた自家製プリンを。ほどよく固さを残した食感に、トンカ豆を使った塩を好みで添えることで、プリンの甘みがいっそう引き立ちます。
「これまで私たちは、野菜の収穫体験や宿泊体験を通して多くの方に楽しんでいただいてきました。ただ、一生産者として伝えられることには限界があるとも感じていました。もちろん、生で食べたり、シンプルにグリルしたりする野菜もおいしいですが、その先の表現もある。素材の味を生かしながら、野菜をもっと楽しく、食べるたびに新しい発見が生まれるような提案をしていきたいと思い、金子シェフの力を借りています」とオーナーの渡辺伯さんは話します。
人と人、人と地域がつながる場所をこれからも
代々養蚕や農業に携わってきた家に生まれ育ち、独立前は石川県金沢市で人力車の車夫として観光ガイドを務めていた渡辺さん。先祖が大切に守ってきた実家の養蚕建築を改修し、奥様とともに地域の魅力を発信しています。
「もともと旅が好きで、世界各地を訪れる中で、いつか宿泊業や飲食業など“人が集まる場”を自分でもつくりたいという思いがありました。私が生まれた頃には養蚕はすでに終わっていましたが、この地域には確かにその足跡が残っています。シルクの産地で、人と人、人と地域がつながる場所ができればという思いで、“紡(つむぐ)”という名前をつけました。」
店内の一角にある「小さな直売所」には、ベーストヨトミの見慣れない品種の新鮮野菜が並びます。併設のゲストハウスでは、レストランの食事を味わうだけでなく、宿泊者が畑に足を運び、自ら収穫した野菜を調理することもできます。
日本の伝統産業の面影が残る空間には海外からの訪問者も訪れ、作り手と受け手の思いを紡ぎながら、人が集い、その土地の味覚を楽しむ。食を通して地域の豊かさを実感できる場所です。
Article written by VALEM co., ltd.
参考情報
農家レストラン 紡
山梨県中央市関原1284
※詳細は下記URLを参照してください。
Instagram:restaurant_tsumugu