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近年の異常な暖冬は地球温暖化と関係あるの?最新の科学データで分かりやすく解説

この冬(2019年から2020年にかけての冬)は暖冬と言われ、とくに雪の少なさは異例。春先の雪解け水が少なくなり各地で水不足の懸念があるとして、気象庁が注意を促す事態に。 では、具体的にどれくらい異例なのでしょうか?また、地球温暖化との関係は?

この冬の暖冬の異例さ〜事例紹介

この冬の暖冬の異例さを、国内外の事例でご紹介します。

暖冬で樹氷の着氷が遅れている(蔵王)

蔵王山頂付近の木々(アオモリトドマツ)がまるごと雪氷に覆われ、アイスモンスターとも喩えられる「蔵王の樹氷」。その幻想的な景色に毎年多くの観光客が訪れます。
しかし、今シーズンは暖冬の影響で樹氷の形成が進まず、例年の2割から3割程度の着氷にとどまっています(2020年1月中旬現在)。例年なら12月下旬から始まる蔵王ロープウェイ山頂駅付近での樹氷のライトアップも雪不足で延期に。
(それでも樹氷の人気は高く、観光客数は例年通り変わらないそうです)

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暖冬で五色沼が凍らない(仙台)

日本のフィギュアスケート発祥の地と言われる五色沼(仙台)。毎年冬には池の湖面は全面凍結しますが、今年は一部薄い氷があるだけで全面凍結はしておらず、珍しい状況とのこと(2020年1月中旬現在)。

ワカサギの穴釣りが例年通りできない

長野県の松原湖や福島県の桧原湖はワカサギの穴釣りの名所として人気ですが、現在(2020年1月中旬)氷が十分に張っておらず、氷上での穴釣りができない状態が続いています。桧原湖では1月25日、一部のエリアのみ予約制で穴釣りを解禁しましたが、それでも全面結氷には至っていません。
近年の暖冬傾向の中でも、今年のようなケースは今までなかったそうです。

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山中湖の雪まつり

山中湖雪まつりは、いままでスケートリンクや雪の滑り台などを設けていましたが、近年降雪がなかったり、暖冬で雪が溶けてしまうため、今季はイベント内容を雪に頼らない企画に変更する予定です。

モスクワでは2020年1月に140年間で最も高い気温に

モスクワも暖冬で、1月17日にモスクワで観測された気温(4.4度)が、同じ日の過去140年間におよぶ観測記録でもっとも高い温度だったとしてニュースになりました。例年1月ならモスクワ川は氷や雪に覆われますが、今年は氷も張っておらず、街にも雪は少ない状態です。

北欧のスキー場でも雪足りず

フィンランドでは1月の日中平均気温が平年より9℃以上低く、スキー場では天然雪だけでは足りず、人工雪で営業しているところも多い状態。

近年の暖冬傾向は温暖化の影響か?

「昔はあの池でよくスケートをしたものだ」 こんな言葉を年配の方から聞くこともあるのではないでしょうか?
筆者も、「昔は凍った椹池(甘利山の池)でスケートをした」「凍った徳島堰を滑りながら家に帰った」など、今では信じがたい話を聞いたことがあります。
「暖冬」かどうかは、その年の寒気の入り方や気圧配置の継続具合に大きな影響を受けますので、年により、また地域により異なりますが、それでも20世紀後半から日本は暖冬傾向にあるのは事実です。

※暖冬の定義:1981年から2010年の平均に比べて気温が高い冬(現在の区分値は1981年から2010年までの30年間で、区分値は10年毎に更新)

では暖冬の原因はいったい何でしょうか?
暖冬が多くなった原因は、「地球温暖化」や「太陽活動の変化」と考えられていますが、はっきりと原因が特定されているわけではありません。これは猛暑や豪雨などの異常気象にも言えることですが、その年の気象現象の原因を個々に突き止めるのはとても難しいようです(だから、地球温暖化が暖冬の原因ではない、という意味ではありません)。
一方で、地球温暖化は、気温や水温を変化させ、海水面上昇、降水量の変化、洪水、猛暑、ハリケーンなどの激しい異常気象を増強させる、と報告されています(IPCC第4次評価報告書)。
IPCC第4次評価報告書とは、世界130カ国から2千人以上の専門家、195カ国の政府代表が関わり、温暖化の原因や影響についての研究成果を集約した報告書です。

現在分かっている地球温暖化の最新データをご紹介します。

過去2000年間の気温変化

こちらは過去2000年間の気温変化を調べたものです。

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出典:Femke Nijsse, Wikimedia Commons under CC BY-SA 4.0

2000年前の気温となると温度計はないので、木の年輪や氷床コア(という氷河や氷床から筒状に取り出す氷の地層)の同位体測定など、様々な手法から間接的に観測します。誤差(薄青部分)はあるものの、2000年前から産業革命以前までに1℃未満のゆっくりとした気温変動があったことが分かっています。これは定期的に繰り返される日射量変動(太陽活動の変化やミランコヴィッチサイクル)が原因と考えられています。
しかし、20世紀後半(産業革命が始まった1750 年以降)からの急な気温上昇は、この日射量変動では説明できないそうで、主に二酸化炭素などの温室効果ガス濃度の増加によって引き起こされた、とIPCCや世界の研究者は考えています。

過去80万年で地球の大気中の二酸化炭素濃度が過去最高

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過去80万年の大気の二酸化炭素濃度の変化(出典:NOAA Climate.gov)

この図は、過去80万年間における地球の大気中二酸化炭素(CO2)の濃度の変化を示しています。
青い折れ線が山と谷を繰り返している様子が見られますが、これは氷河期と間氷期(かんぴょうき、気候が比較的温暖な時代)が交互にやってきて、二酸化炭素濃度が増減してきたことを意味するそうです。濃度が低い時期が氷河期です。このサイクルはいわば、この星の息吹です。
過去80万年間、その息吹は(大気中二酸化炭素濃度は)300 ppmを超えることはありませんでしたが、 2018年には407ppm(図中の黒い点)に到達。過去80万年間で最も高い値になりました。

ちなみに、ホモ・サピエンス(ヒト)が誕生したのが今から40万年〜25万年前です

Article written by ヒノキブンコ

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