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富士登山のマップ・各ルートの特徴・装備・判断のまとめ〜富士山を安全に楽しむために

日本の最高峰、富士山(3,776m)。その高さもさることながら、独立峰の雄々しい姿は、有史以前から多くの登山者を惹きつけてきました。一度は富士山に登りたいと思っている方も多いと思いますが「富士登山」は本格登山につき、登頂ルートや装備、万が一のときの判断など事前の準備が不可欠です。ここでは、入山前に知っておくべきことをまとめました。

この記事の目次

※2020年は新型コロナウイルスの影響で、富士山は全ての登下山道が閉鎖され、登山できません。山小屋や公衆トイレなどの施設も閉鎖されています。

※富士登山には登山の装備、知識、経験が必要です。この記事は、山開きの7月1日〜9月下旬までのいわゆる夏山シーズン向けの記事です。

※期間外の登山は「万全な準備をしない登山者の登山は禁止」されており、とくに冬期、残雪期の富士山への登山は山岳登はんの経験のある登山者でも極めて危険です。

富士登山の4ルートとその特徴・注意点

富士山の山頂へ向かう登山道は4つあります。吉田ルート、須走ルート、御殿場ルート、富士宮ルートです(以下に概要図)。それぞれのコースに特徴と魅力があります。

富士登山の4ルート
富士登山の4ルートの概要マップ
(「富士登山オフィシャルサイト」より転載)

吉田ルート(登山口は富士スバルライン五合目)

吉田ルート
吉田ルート(「富士登山オフィシャルサイト」より転載)

吉田ルートは富士山を北側から登るルートです。特徴は以下です。

1. 4つのルートの中で一番人気のルート(富士登山客の半数以上が吉田ルートを利用)
2. 富士スバルライン五合目が登山口
3. 登りと下りで登山道が別なので要注意
4. 登りの登山道には山小屋が多くあるが、下山道には山小屋はほとんどない(水分調達やトイレに注意)

五合目につながる「富士スバルライン」は、自然保護と渋滞抑制のため、例年夏シーズンに原則一般車両の通行は禁止になります(マイカー規制)。ただし、電気自動車や自転車、身体障害者等乗車車両はマイカー規制期間中でも規制区間の通行ができます。マイカー規制期間中は、自家用車は東富士五湖道路富士吉田IC付近にある富士山パーキング(旧 山梨県立北麓駐車場)に駐車し、そこから富士スバルライン五合目行きのシャトルバスで登山口に向かいます(駐車場、シャトルバスは有料)。

吉田ルートから登った登山者が、須走ルートへ間違えて下山する「下山道道迷い」が毎年発生しています。吉田ルートは、登山ルートと下山ルートが異なるため、八合目付近の吉田ルートと須走ルートの分岐で、須走ルートへ下ってしまい、道迷いとなります。道迷いをしないためには、このルートを使う場合『下山の際に分岐点がある』ことを覚えておきましょう。

須走ルート(登山口は須走口五合目)

須走ルート
須走ルート(「富士登山オフィシャルサイト」より転載)

須走ルートは、富士山を東側から登るルートです。他のルートと比べるとなだらかで急な岩場も少ない上、八合目付近までは比較的登山者も少なく、さらに原始林も歩けるので富士登山の魅力が詰まったルートと言えます。特徴は以下です。

1. 七合目付近まで樹林帯・原始林を味わえる、最も緑豊かなルート
2. ふじあざみラインの終点、須走口五合目が登山口
3. 八合目付近から『吉田ルート』と合流するため、下山で吉田ルートへ間違えるケースあり

五合目へつながる「ふじあざみライン」は、自然保護と渋滞抑制のため、例年夏シーズンに原則一般車両の通行は禁止になります(マイカー規制)。ただし、電気自動車や自転車、身体障害者等乗車車両はマイカー規制期間中でも規制区間の通行ができます。マイカー規制期間中は、自家用車は「道の駅すばしり」奥にある須走多目的広場臨時駐車場に駐車し、そこから須走口五合目行きのシャトルバスかタクシーで登山口に向かいます(駐車場、シャトルバスは有料)。

八合目付近から本ルートは『吉田ルート』と合流するため、下山で吉田ルートへ間違えて入ってしまうケースがあります(いわゆる「下山道道迷い」)。道迷いをしないためには、このルートを使う場合『下山の際に分岐点がある』ことを覚えておきましょう。

御殿場ルート(登山口は御殿場口新五合目)

御殿場ルート
御殿場ルート(「富士登山オフィシャルサイト」より転載)

御殿場ルートは富士山を南東面から登るルートです。登山口の標高が最も低く傾斜が緩やかです。その分、登山標高差が2,300m以上と4ルートの中でもっとも大きく、経験・体力ともに充実した人でも日帰りは簡単でないルートです。

1. 4ルートの中で最もコースタイムが長く、標高差が大きい
2. 最も登山者が少ない
3. 岩場などの危険箇所は少ないが、トイレや山小屋も少なく、熱中症や脱水症状、高山病など緊急時に対応できる施設がない
4. 目標物が少ないため、濃霧時や日暮れ後は道に迷いやすい

夏シーズン中でも御殿場ルートではマイカー規制は実施されません。

岩場などの危険箇所は少ないものの、トイレや山小屋が少なく日陰が少ないので、熱中症や脱水症状、高山病など緊急時に注意しましょう。健脚、登山熟練者向けルートと言えます。

富士宮ルート(登山口は富士宮口五合目)

富士宮ルート
富士宮ルート(「富士登山オフィシャルサイト」より転載)

富士宮ルートは、富士山を南側から登るルートです。登山者も多く混雑しますが、他のルートよりも早く山頂に着くことができるメリットがあります。一方で、登りの道と下山の道が同じなので、休日の朝夕は渋滞することも多いコースです。

1. 傾斜が急で岩場が多い
2. 富士山の最高地点「剣ヶ峰」が4ルート中一番近い(お鉢巡りを歩く時間が短い)
3. 山小屋が多く、八合目に診療所がある
4. 登りと下りが同じ道で混雑しやすい
5. 例年残雪が多く、7月中旬まで登山道が開通しない年もある

五合目へつながる「富士山スカイライン」は、自然保護と渋滞抑制のため、毎年夏シーズンに原則一般車両の通行を禁止しています(マイカー規制)。ただし、電気自動車や自転車、身体障害者等乗車車両はマイカー規制期間中でも規制区間の通行ができます。マイカー規制期間中は「水ヶ塚公園駐車場」に駐車し、そこから富士宮口五合目行きのシャトルバスかタクシーで登山口に向かいます(シャトルバス・駐車場は有料)。

※2020年9月7日確認時点の情報となります。最新の情報は「富士登山オフィシャルサイト」のホームページなどでご確認ください。

富士登山の装備

富士山の夏シーズンは7月から9月中旬。この時期は街では連日夏日・猛暑日ですが、富士山は冬の気温。8月でも頂上付近でリュックの雨水が風で凍ることも。例えば、2020年7月13日の富士山の気温は、最低気温は2.1℃、最高気温は3.5℃。天気が急変しやすく怪我や事故が起こりやすい富士登山は、万一に備えた登山装備と緊急時の判断が不可欠です。

富士登山
富士登山

登山靴・トレッキングシューズ

くるぶしも覆うハイカットのものを選びます。ハイカットでない靴の場合、捻挫しやすくなったり、靴の中に小石が入ります。スニーカーやサンダルは不可です。

レインウェア(雨具・カッパ)

上下が分かれた耐久性のある登山用ウェインウェアを用意します。ポンチョや傘は禁物です。ゴアテックスのようにレインウェアの素材に透湿機能があるものが理想的です。

防寒着・肌着・シャツ等

夏の富士山は下界の冬の気温であるため、半袖・短パンで入山するのは非常に危険です。ダウンジャケットやフリース、セーターなどの防寒着を持っていきます。登山の服装は調整しやすい重ね着が基本。体温調節しやいよう、厚さの違う肌着やシャツも持って行きます。基本的にはすべて速乾性の素材を選び、汗で服や体が濡れたままにならないようにします。綿など乾きにくい素材は、上からレインウェアを着ても、人の汗で中が濡れ冷えて体温を奪われるリスクがあります。

帽子

富士山はほとんど樹林がなく、好天なら登山中ずっと強い日差しにさらされます。日焼け対策、熱中症対策のために、登山用やスポーツ用の帽子を持っていきます。

ヘッドライト

夜の行動予定がなくてもヘッドライトは必ず持参します。登山道の渋滞や体調の悪化により、予定よりも下山が遅れる可能性があります。日没を過ぎるとすぐに暗くなり、ライトなしではまず下山できません。手持ち対応のライトではなく必ずヘッドライトを持っていきます。また、予備の電池も濡れないようにパッキングして持参します。

山小屋が多いルートなら途中の購入も可能ですが、基本的に1~2Lの水を登山口から携行します。

行動食

パンやおにぎり、チョコレート、ナッツ類を携行し、休憩時に少しずつ食べるようにします。富士登山は長時間の行動になるため、中にはエネルギー不足でハンガーノック(後述)に陥る人もいます。ルートによっては山小屋で食事をとれますが、山小屋のないルートもあるので行動食は必ず持参します。

地図・コンパス

地図やコンパスは必ず携行します。地図は書店で販売している山地図を携行します。

ヘルメット

登山中に発生する落石や転倒で頭部を守るためヘルメットの携行が最近は推奨されています。

スパッツ

「砂走り」などルートによっては登山靴が砂利に深く沈み込む場所もあります。小石や砂利が靴の中に入って歩きづらくなるのを防ぐため、スパッツを持参します。スパッツとは、靴からふくらはぎにかけて足下を覆う布製の道具で、登山ショップや大型のスポーツ用品店などで売っています。

スパッツ
スパッツ

その他

ザック・リュック、日焼け止め、お金、ゴミ袋、サングラス、スマホ(携帯電話)、危急時用医薬品、健康保険証、タオル、ストック、カイロ、山岳保険への加入なども必要です。詳しくは「富士登山オフィシャルサイト」のホームページをご確認ください。

「登山に必要な装備」(富士登山オフィシャルサイト)

富士登山のリスク(自然要因・怪我・病気など)

高所を目指す富士登山ゆえ、毎年事故やけが人が発生しています。大切なのは登山前に想定されるリスクやその対処を十分に理解しておくことです。

※詳しくは、ガイドや同行する経験者の指示に従って登山してください。
※自力で下山ができなくなった場合は、早めに携帯電話や山小屋を通じて救助要請をしましょう。

富士山くだり
富士登山(下山)

悪天候(落雷・突風・濃霧など)

富士山はとくに天候が急変しやすく、気流が安定しないため落雷も発生しやすい山です。事前に週間天気を確認して、前々日から警報、注意報などをこまめにチェックしましょう。また入山してから天候が悪化した場合は、無理をせず、登山を中止する判断が必要です。

転倒・捻挫・骨折

富士登山はハイキングではなく、長時間の本格的な登山です。登山中には、転倒、捻挫、すり傷、打撲、骨折などのリスクがあります。とくに転倒時に手首をついて骨折したり、尻もちをついて脊椎圧迫骨折となるケースもあります。「転倒者の8割が下山中」というデータもあるので、疲労がたまりやすい下りはとくに注意が必要です。

落石

富士山は火山岩や礫が積もり重なった場所であるため、とくに落石が起こりやすい山です。上部の落石に常に注意する、休憩時は落石が少ない場所を選ぶなどの対策をとります。万一自分が落石を起こしたらすぐに大きな声で、「らく!落石!」などと大声で呼びかけて周囲の人に注意を促します。

低体温症

低体温症とは、長時間低温に晒されることで深部体温が35℃以下となり、体の代謝が正常に行われなくなる状態で、重症の場合、命に関わる状態となります。 富士登山では防寒着が不足していたり、雨具を持っておらず、濡れた服で長時間行動した場合などに起こります。実際に8月に富士山で低体温症で亡くなるケースもあります。 症状として、体の震えが止まらない、意識・思考力が低下する、会話がうまくできなくなる、などが挙げられます。

滑落

突風でバランスを崩したり、登山道で道を譲るときにふらっとして、岩や斜面から足を滑らせ滑落するリスクがあります。また、山頂部は岩が低温と凍っていて滑りやすいことがあるので、特に注意が必要です。

富士登山と岩場
富士登山は岩場が多い

高山病

高山病とは低酸素状態で起こる体の不調で、息苦しい、頭痛、嘔吐、めまい、眠気などの症状が起こり、重症の場合、高地脳浮腫などで死亡することもあります。富士山での高山病を防ぐには、五合目付近で数時間体を慣れさせたり、登山開始後は水分補給や休憩をこまめに行います。症状がひどい場合は高度を下げるため下山する必要があります。

脱水症・熱中症

富士登山のルートの多くが樹林や日陰がないコースです。天気の良い日は、登り始めから登頂、下山に至るまで行動中はずっと直射日光にさらされている状態となります。そのため例年、脱水症状や熱中症にかかる方がいます。熱中症の症状は大量の発汗、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、失神、けいれんなどで、重症の場合死亡することもあります。対策として、帽子をかぶり、こまめに水分補給を行い、休憩をとります。

膝痛

普段から膝に痛みのある方はよく医師に相談する必要があります。富士登山では長い下りで膝に過度の負担がかかります。医師のアドバイスの下、必要な対策や訓練を行なってから富士登山に臨みます。もともと膝に不調がない方でも、下山中に膝痛が起こる人も多いようです。

ハンガーノック(シャリバテ)

ハンガーノックとはシャリバテ(シャリは飯)とも言われ、食事をとらなかったために極度の低血糖状態に陥り、強い疲労感を感じたり、体に力が入らなくなる症状です。体がエネルギーを失った状態なので、体を動かそうとしても脚が上がらなかったり、ひどい脱力感で立っていられなくなったりします。重症の場合、意識低下が起こります。回復には、安全な場所で休憩し、蜂蜜やブドウ糖タブレット、氷砂糖の補給を行います。

※詳しくは、ガイドや同行する経験者の指示に従って登山してください。
※自力で下山ができなくなった場合は、早めに携帯電話や山小屋を通じて救助要請をしましょう。

以上、富士登山のルートや必要装備、リスクの解説でした。

有史以前から人々を魅了しつづける富士山。そんな富士山の魅力に惹かれて富士山の近くに移り住む人も多いようです。一度は富士山に登りたいと思っている方も多いと思いますが、十分な準備と装備で安全な登山を行いましょう。

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Written by ヒノキブンコ

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