
日本一小さな鳥「キクイタダキ」の大きな魅力
キクイタダキは、日本で見られる野鳥の中でもとくに可愛い小鳥として野鳥ファンに人気です。
筆者も数年前、山梨県早川町にある南アルプス邑野鳥公園で、この鳥に出会いました。ガイドさんに付き添われて森の中を散策していると、シジュウカラやヤマガラの混群にまじって、小さな1羽のキクイタダキが姿を現しました。
「今日は運がいいですよ」とガイドさん。指をさした先、頭上のヒノキの枝にキクイタダキがいたのです。下はその時の写真です。
何度もシャッターを切ったものの、キクイタダキはとても小さな鳥で、枝の間を素早く動き回ります。ピントを合わせるのは難しく、結局、手元に残ったのは、ぼけた写真ばかりでした。あのときの気持ちは、今もピンボケせずに残っていますが・・・
キクイタダキは日本最小の鳥
キクイタダキはスズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属の小鳥で、世界に分布し、日本では北海道と中部以北の本州で繁殖し、西日本でも越冬のため一部飛来します。
体長はおよそ 9〜10cm。スズメよりもひとまわり小さく、日本で確認されている鳥の中では最小クラスです。
体重はわずか5gほど。一円玉5枚ほどの重さしかありません。ちなみにスズメは一円玉20枚分の重さです。
キクイタダキの名前の由来は、頭の上にいただく「菊」
キクイタダキという名前は、頭頂部にある黄色い羽毛に由来します。この羽毛がまるで小さな菊の花のように見えることから、「菊戴(きくいただき)」というユニークな名前が付けられました。
この部分は、冠羽(かんう)と呼ばれるもので、平常時は寝ていますが、興奮したときや縄張り争い、警戒時や求愛行動のときに逆立ちます。
よく見ると、黄色の冠羽の中に、濃いオレンジの羽毛があるのが分かります。なんとも精巧な冠羽です。
そもそも冠羽ってなに?
冠羽とは、頭のてっぺんにある長い羽のことです。
鳥はそもそも羽で覆われていますが、頭のてっぺんにあって、立てたり寝かせたりと動かせるものが冠羽に該当します。
ニワトリの「トサカ」と一見似ていますが、違うものです。なぜならニワトリのトサカは羽ではなく皮膚だからです。
冠羽には求愛行動(自分の強さやかっこよさを相手に伝える)や威嚇(別のオスや他の鳥に怒っていることを伝える)の役割があります。
冠羽を持っている鳥は他にもいます。たとえば、ヒレンジャク、カンムリカイツブリやオカメインコなどです。その他にもたくさんの鳥が冠羽を持ちます。
キクイタダキの暮らし
キクイタダキは5g前後ととても小さい体にもかかわらず、寒冷な高山帯や亜高山帯でたくましく暮らしています。小さい体は枝の隙間を自在に動き回るのに便利で、筆者が見かけた時もヒノキの枝の間を器用に動き回っていました。
そうやって、枝やその樹皮下に隠れた小さな虫やクモを効率よく探し出して食べます。
春から夏にかけて山地や亜高山帯の針葉樹林に移動し、冬は標高を落として里山や山地の樹林や公園で過ごします。
キクイタダキに出会いたい!どこで見られる?山梨の観察ポイントは?
夏なら亜高山帯〜高山帯のヒノキ、スギ、トウヒ、シラビソなどの針葉樹が広がる森、冬なら山地や低地で針葉樹林のある公園や神社、里山が発見ポイントです。
とはいえ、夏は北海道と中部以北の本州でしか見つけることはできません。冬なら越冬のため西日本にも飛来してくるので、広島や京都などの低地の針葉樹林で観察できます。
シジュウカラやエナガ、メジロなどと混群を形成して共に移動することが多いので、カラ類の群れを探すのが効果的です。
山梨県で見られるエリアは南アルプス、八ヶ岳、大菩薩、西沢渓谷など。冒頭の山梨県早川町の南アルプス邑野鳥公園は専門のスタッフに案内してもらえるので、とてもおすすめです。ただし、必ずキクイタダキに出会えるわけではないのでご注意を。
以上、キクイタダキの魅力をご紹介しました。
広葉樹の葉が落ちる冬は、小鳥の観察がしやすい季節です。寒い時期なのでしっかり防寒対策をして、ぜひキクイタダキを探しに、山梨の森へ足を運んでみてはいかがでしょうか。思いがけない出会いが、冬の森の楽しみを教えてくれるかもしれません。
written by ヒノキブンコ









