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登山者を魅了してやまない山梨の名峰【後編】

この記事の目次

山梨は国内屈指の山岳県。登山ファンが愛してやまない人気の山が多くあります。

ここでは、登山が趣味の方、これから登山を始めたいと思っている方へ、登山者を魅了してやまない山梨の名峰【後編】をご紹介します。

※登山は危険を伴う行為です。ご自身の技量にあった計画を立てて、安全な登山を心がけましょう。山梨の山グレーディングもぜひご参考ください。

※ 2019年の台風19号などの影響で、山域により登山道やアプローチの道路は、場所によって通行が困難である可能性があります。必ず事前に山荘や行政に確認してください。

鳳凰三山(地蔵ヶ岳、観音ヶ岳、薬師ヶ岳)

鳳凰三山(ほうおうさんざん)は、地蔵ヶ岳(2,764m)、観音ヶ岳(2,841m)、薬師ヶ岳(2,780m)の総称で、日本百名山に数えられます。いずれも3,000メートルに迫る高山でありながら、まとめて一つの百名山とするのは全国でも珍しいケースと言えるでしょう。

初夏から初秋にかけて多くの登山客で賑わいます。稜線に上がれば、西に南アルプスの急峻な地形、東に甲府盆地のパノラマが広がり、まるで鳥になったような高度感が味わえます。

鳳凰という優雅な名前の由来には諸説ありますが、その一つは、地蔵ヶ岳山頂にそびえ立つオベリスク(と呼ばれる巨石の自然物)が鳥の嘴(くちばし)に喩えられてその名がついたというもの。あれだけ大きなクチバシを持つ鳳凰の全長はいったいどれ程になるのでしょうか。

Tozan_2_01.jpg地蔵ヶ岳のオベリスク

オベリスクは天気が良ければ山梨県内(甲府市や甲斐市など)から目視することができます。晴れた日に山梨で、誰かと景色を眺める機会があったなら、「あの尖っているところはオベリスクという大きな岩なんだよ」なんて話してあげるのもいいかも。

また、観音ヶ岳付近からは、ちょうど北岳の断崖(北岳バットレス)を正面から眺めることができます。なかなか全容を見ることができない北岳ですが、露わになったその姿にしばし目を奪われることでしょう。

Tozan_2_02.jpg厳冬期に観音ヶ岳付近から見る北岳山頂と北岳バットレス
(冬季登山は経験者の下で十分な訓練と経験が必要です)

瑞牆山

瑞牆山(みずがきやま、2,230m)は山梨県北部に位置する花崗岩を主体とする山です。

Tozan_2_03.jpg奥に見える瑞牆山
(photolibraryより)

十一面岩(といちめんいわ)など国内でも難度の高いクライミングルートを数多く擁する瑞牆山(みずがきやま、2,230m)。ここを練習場にしてきたクライマーの中には、登山界で最も権威ある世界的な賞(ピオレドール賞)を日本人として初めて受賞した登山家もいます。

もちろんクライミングの経験がなくても一般ルートで瑞牆山山頂へ登れます。鎖場など注意する箇所も現れますが、上級者向けというよりは中級者向けで、瑞牆山荘からなら十分日帰りできます。

山頂からの富士山や八ヶ岳の景色は素晴らしく、またヤスリ岩など巨岩が切り立つ光景にどこか異国の地に足を運んだような感覚に見舞われることでしょう。

富士山

霊峰、富士(3,776m)。その名は世界で知られ、国内外から毎年30万人近くの人が山頂を目指します。

Tozan_2_04.jpg富士山(山梨県甲斐市より)

夜明けからのご来光や火口痕のダイナミクス、360℃の大パノラマなど、他の山とはひと味違う第一級の光景がここにはあります。

すでに富士山山頂まで登ったことがあるなら、次は『1合目から』を楽しむのも手です。吉田馬返しコースはほぼ1合目からスタートできるコースで、江戸時代には盛んに使われていた由緒ある古道。歴史の重厚に想いを馳せてみるのもいいかもしれませんね。吉田馬返しコースは登れる期間が長いのもメリットで、5月の初夏から10月の紅葉の季節まで原生林の静寂が季節を通して愉しめます(対して、5合目から山頂へのコースの開山期間は7月上旬から9月上旬と2ヶ月程度)。

なお、概して登山愛好家は富士山から足が遠のきがちです。たぶんその単調な登り(5合目以上)と登山道の渋滞が、彼らが登山に求める要素のいくつかを欠くためではないかと筆者は推測してます。が、実際はどうなのでしょうか。

茅ヶ岳

Tozan_2_05.jpg夕日に映える茅ヶ岳(正面奥は八ヶ岳)
(photolibraryより)

茅ヶ岳(かやがたけ、1,704m)と聞いて、ある人物を連想したならあなたは登山通です。その名は深田久弥(1903-1971)。随筆「日本百名山」の著者で、国内に「日本百名山ブーム」を引き起こした人物です。

茅ヶ岳は彼が登山中に急逝した山で、ふもとには深田記念公園があり、毎年4月には韮崎市と地元山岳会が同氏を偲ぶ『深田祭』を行っています。

深田記念公園から登るピストンコースが一般的で、山頂までは2時間弱。気軽に登れる上、山頂からは南アルプス、八ヶ岳、富士山、秩父山塊の眺望が良いため、東京からの日帰りや親子連れの登山者で週末は賑わいます。

金峰山

金峰山(きんぷさん、2,599m)は秩父多摩甲斐国立公園に位置する花崗岩質の山です。山梨県と長野県の県境にあり、山梨県では「きんぷさん」、長野県では「きんぽうざん」と読み方が違うのも特徴です。

登山コースはいくつかありますが、大弛峠からのコースは山頂まで3時間弱の行程、初心者や家族登山に人気です。岩稜帯、苔むした原始林、ハイマツに覆われた稜線など、登山の醍醐味を数時間で一気に味わえるのが魅力でしょう。

金峰山信仰と呼ばれる山岳信仰の歴史があり、山頂からは古代から平安時代にかけてのものとされる数珠玉や古銭、水晶玉などの出土品が発見されています(出土品は山梨県立博物館で見ることができます)。また、金運アップや商売繁盛の御利益があるとして有名な金櫻神社(山梨県)も、この金峰山を御神体としています。

Tozan_2_06.jpg金峰山山頂の五丈岩

山頂には「五丈岩」という巨岩があり、これを登る人もいます。しかし、クライミングやボルダリングの経験がないなら安易に挑むのは危険です。下地も岩であるため、転落して大けがをする危険があるからです。仲間の前だからと、つい正常な判断力を失ってはいけません。

七面山 〜南アルプスの霊山~

Tozan_2_07.jpg七面山

山の魅力が信仰の歴史によるものなら、七面山(しちめんさん、1982m)は国内有数の魅力ある山です。

1274年、日蓮聖人が身延山に入山し、身延山とともに七面山が法華経信仰の聖地となると、それ以来700年以上にわたる現在まで、人々は祈りのためにこの山に登りました。さらに、七面山は土着の信仰対象として古代より存在していたという説もあり、その場合、七面山の信仰の歴史は悠久のときを含むことになります。

山頂へつづく祈りの道は厳しいものですが、一般的な登山道と比べれば比較的整備されていて歩きやすいでしょう。道沿いに続く巨木の林や石灯篭がこの土地の記憶を連想させます。登詣口から山頂まで4~5時間程度です。

七面山への登詣(とけい)は表参道と裏参道があります。両者の合流点の少し上、山頂手前にある敬慎院は江戸時代から多くの人で賑わいました。この宿坊の長い敷布団や大きなおにぎりは有名ですが、登詣者の安全を願い長年続けられた営みです。

※敬慎院に泊まるには事前の予約が必要です。(1泊2食付 1名6,500円)

まとめ


登山をしているときにアイデアが生まれた経験は多くの人にあるかと思いますが、それは緊張感と開放感の狭間に身を置くからかもしれません。緊張感は自然への畏敬から来るもの、開放感は鳥が普段味わってるような感覚。そんな双極の2つのセンスが登山者に特別な化学反応を起こしてくれるのかもしれませんね。


以上、登山者を魅了してやまない山梨の名峰【後編】でした。

Article written by ヒノキブンコ

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