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大学生の子ども3人以上で大学無償化案

少子化対策を進め、子育てしやすい社会を作るため、そして子どもの権利や幸せを守るために、こども家庭庁が設立されたことは先日の記事(こども家庭庁って何?設立の背景はかなり深刻)でもお伝えしたところです。

今回は、その少子化対策の一環であり最近ニュースでも取り上げられている「子どもが3人以上で大学無償化」について説明します。

※本記事は2023年12月時点での情報に基づいています。

子ども3人以上で大学無償化

子ども3人以上の世帯に所得制限なしで大学などの入学金、授業料を無償化する案が「こども未来戦略」に盛り込まれました。

所得制限は設けず、「扶養する子ども」が3人以上ですべての子どもが大学無償化になるという案です。短大や専門学校にも適応されます。国立大学なら一人およそ年間54万円まで、私立大学なら一人当たり年間70万円までとなる予定です。

たとえば私大なら、年間の学費70万×4年で280万、3人の子どもが大学に行くなら計800万円以上かかるところが国の施策により無償になります。これは、多子世帯に重くのしかかる高等教育費という不安が大きく解消されるものです。

ただし、現在の案にはいくつか懸念点もあるようです。

子どもが3人の場合、第1子就労で全員対象外?

現在検討されている案では「扶養する子どもが3人以上」であるため、就労などで第1子が親の扶養から外れた場合、他の二人が大学無償化の対象から外れることになります。卒業すれば就職して親の扶養から外れる人も多いため、制度を利用する現実的な難しさが指摘されています。

また、6年制の医薬学部なら6年間無償化を受けられるものの、大学院は支援対象外です。理系大学ならキャリアや就労のための大学院進学が一般的である中、教育支援が途中で打ち切られる格好になります。ただし、第1子が大学院生なら第2、3子が無償化対象になる予定です。

こども未来戦略とは?

多子世帯の授業料等無償化案は「こども未来戦略」に盛り込まれた少子化対策の一つです。

こども未来戦略とは、日本の少子化に歯止めをかけ、子育て環境や子どもの養育を社会で取り組んでいくために政府により閣議決定された政策方針のことです。第1回こども未来戦略会議は2023年4月に第1回目が開催され、大学無償化などの素案が盛り込まれた今回(12月11日開催)で8回目となります。

職員の配置、無償化制度などに2028年までに3.6兆円を投じて、こども未来戦略の施策を実施していきます。たとえば、「児童手当の所得制限撤廃」、「支給期間を高校卒業まで延長」など児童手当の拡充は2024年10月分からスタートする予定です。

この戦略方針には3つの基本理念があります。

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出典:「こども未来戦略方針(リーフレット等)」(こども家庭庁ホームページ)(令和5年12月17日に利用)

若い世代の所得増加

勉強、就労、恋愛、結婚、出産、子育て・・・ライフイベントが次々やってくる若者世代こそ、所得面で不安なく将来の見通しが立てられるような社会であるべき。

その考えのもと、若い世代の所得を増やすために、賃上げやいわゆる 106万円・130万円の壁を意識せずに働ける社会を目指します。

社会全体の構造・意識を変える

夫婦の帰宅時間を早め、お父さんが保育園に迎えにいける、家で子どもと過ごす時間を増やし、夫婦が協力して安心してゆとりをもって子育てができる社会の実現を目指します。

全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援する

全てのこども・子育て世帯を切れ目ない支援を通して、安心して子どもを産み育てられる社会を実現します。具体的には、幼児教育・保育の無償化、待機児童対策、これまで支援が手薄だった妊娠期から0~2歳の支援の強化などです。

少子化対策先進国と言われたフランスでさえ・・・

フランスは少子化対策が功を奏して出生率の回復を遂げた国として有名です。合計特殊出生率は2010年には2.03まで上がりました。

しかし、2015年以降再び下がり始め、2022年には1.80になりました。少子化対策先進国と言われたフランスでさえ人口置換水準*を維持できない現実は少子化対策の難しさを示すものです。日本でも、現代の若者の結婚観や人生観、ライフスタイルに照らし合わせた対策が求められます。

*人口が維持される出生水準のことで、合計特殊出生率2.07とされる


以上、「大学生の子ども3人以上で大学無償化案」でした。ユニセフのレポートカード16(2020年)で、子どもの精神的幸福度が38カ国中37位と世界ワースト2位だった日本。そんな日本の未来を決める施策が本格的に始まります。

written by ヒノキブンコ

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