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こども家庭庁って何?設立の背景はかなり深刻

2023年4月に発足した「こども家庭庁」についてご紹介します。

こども家庭庁とは?

こども家庭庁は、子育てや少子化、児童虐待、いじめなど子どもを取り巻く社会問題に対して本質的な対策を進め解決するために内閣府に設置された組織です。

2022年6月に「こども家庭庁設置法」と「こども基本法」が成立し、2023年4月1日にこども家庭庁が発足。子どもに関する政策や支援は内閣府、文部科学省、厚生労働省など複数の省庁にまたがるため、担当部署や子どもの年齢で分断されがちでした。しかし、児童虐待や少子化など子どもにまつわる課題はまったなし。早急に途切れない政策支援、社会基盤の整備が求められています。

そこで作られたのがこども家庭庁です。子どもを中心に考え、子どもの権利を守り、子どもと家庭の福祉や健康向上、少子化対策をシームレスで進めます。

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こども家庭庁、設置の背景

どんな子どもも等しく健やかに成長できる社会でなければいけません。しかし、子どもの権利が軽んじられた結果起こってしまう悲しい事件があとをたちません。

また、少子化対策には安心して出産、子育てできる社会が前提ですが、子育て世代(大人)を取り巻く環境もまた、経済面等で過酷な状況にあります。

少子化問題

2021年の日本の合計特殊出生率は1.30人でした。この値が2.07以下だと人口減少は止まりません。同じく少子化問題に直面してきた先進国の多くが出生率を反転している中、日本はG7(先進7カ国)の中で6位と深刻な状況が続いています。

日本の未婚者の9割弱は「いずれ結婚するつもり」と回答していても、収入が不安定な男性は結婚相手として選ばれにくい現状があり、その理由として「結婚したら主に男性が稼ぐ」といった昔ながらの価値観が今も根強いことが影響していると言われます。そこには女性が経済的に自立しにくいという日本社会の現状が密接に関わります。欧州のように妻が夫に家計を依存する割合が低い社会は少子化対策になります。

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子どもの貧困問題

豊かな国といわれる日本ですが、実は子どもの貧困問題は深刻です。

2018年の日本の子どもの貧困率は13.5%。子どもの7~8人に1人が『貧困状態』ということになりますが、この割合はG7(先進7カ国)の中で高い水準です。1997年から日本の子どもの貧困率は13~16%で推移しています。

さらに、ひとり親世帯の貧困率も日本は50.8%とOECD加盟国33カ国中ワースト1です(経済協力開発機構による調査、2014年版)。

母親の就労率を見ると日本は世界的に高いにもかかわらず、ひとり親世帯の貧困率も高いということから、働いても貧困から抜け出せない状況があることが分かります。ひとり親世帯(とくに母子世帯)が頼りにしやすい「非正規雇用」や「パート雇用」という雇用形態が貧困から抜け出しづらい状況を作っていると見ることができます。

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ひとり親世帯の相対的貧困率で日本はOECD加盟国33カ国中ワースト1(赤丸)
出典:内閣府ホームページ

「子どもの貧困」については、こちらの記事もご覧下さい。

年々増加する児童虐待

全国の児童相談所にあった児童虐待相談件数は年々増加しています。令和3年度は207,659件と過去最多でした。

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令和3年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数の推移(厚生労働省)

しかしこの件数は氷山の一角であるという専門家の指摘もあります。

虐待相談対応件数は20万前後だとしても、虐待を受けているのに通告されない、相談件数として上がってこない「蚊帳の外」の子どもたちはその数倍いる可能性があるためです。

児童虐待問題の取り組みの歴史が長いアメリカ、イギリス、カナダでは、報告値が実際の虐待件数に近づいているとされ、その統計からそれら先進国では人口のおよそ1%程度の子どもが虐待を受けている実態が見えてきました。

日本にこの割合を適応すると、日本の人口の1%、つまり127万人の子どもが虐待を受けている可能性があり、通告件数より実際は6倍多い可能性が出てきます。もちろん、欧米と日本では社会環境や家庭文化が異なるので1%をそのまま日本に適応できるかは議論の余地のあるところです。それでも、子どもの権利に対する考え方が進んでいるとは決して言えない日本にあって、この割合が有意に低いとは考えにくいかもしれません。

出典:虐待問題は待ったなし|地域総合子ども家庭支援センター・テラさんインタビュー

子どもの「精神的幸福度」、日本は世界ワースト2位

ユニセフのレポートカードによると、日本の子どもの「精神的幸福度」が世界ワースト2位でした(レポートカード16、2020)。

レポートカードとは、ユニセフが一年半ごとに発行する子どもの幸福度を国ごとに評価した成績簿のようなもの。
2020年にレポートカード16が、2022年にレポートカード17が発表されました。
毎回同じ指標が評価されているわけではなく、レポートカード16では子どもの心身の健康や生活満足度などが、レポートカード17は大気汚染など環境面から見た子どもの幸福度が発表されました。ちなみに、レポートカード17では日本は総合順位13位。大気汚染の影響の少なさでは世界2位と良い結果でした。 

精神的幸福度は「子どもの自殺率」「子どもの生活満足度」から評価されましたが、日本は38カ国中37位、世界ワースト2位でした。また、「15~19歳の自殺率」はワースト12位でした。2022年の児童・生徒(小中高校生)の自殺者数は514人で過去最多となりました。

  • 「精神的幸福度」:37位(生活満足度が高い子どもの割合、自殺率)
  • 「身体的健康」:1位(子どもの死亡率の低さ、過体重・肥満の子どもの割合)

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生活満足度が高い15歳の割合
出典:レポートカード16(ユニセフ)
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15~19歳の自殺率
出典:レポートカード16(ユニセフ)

日本の子どもの生活満足度は先進国の中でとても低く、自殺率が高いという実態が明らかになったのです。

こども家庭庁の目的

このように子どもを取り巻く課題は深刻で、社会基盤の改革は急務です。こども家庭庁は本格的な少子化対策を進め、同時に子どもの貧困対策や児童虐待対策を進めていくことになります。

こども家庭庁は『こどもの目線、子育てをしている人の声を大切にし、地方自治体(都道府県や市区町村)や地域団体と連携して政策を進める』としてます。こども基本法案の目的は以下です。

こども家庭庁は『こどもの目線、子育てをしている人の声を大切にし、地方自治体(都道府県や市区町村)や地域団体と連携して政策を進める』としています。

こども基本法案の目的は『すべてのこどもが、家庭など置かれている環境にかかわらず等しく健やかに成長でき、こどもの権利が守られ、幸福な生活を送れる社会を実現するために、こども施策を総合的に進めること』です(こども基本法案 第一条より)

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こども政策の基本理念

こどもに関わる政策を進めていく上で6つの基本方針が決まっています。

kodomokatei_07.pngこども家庭庁の創設について, 内閣官房こども家庭庁

今まさに困難に直面している子どもたちは、声も上げられずに日々の絶望を耐えしのぐだけです。今度、現場の声を取材予定です。

written by ヒノキブンコ

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