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「韮崎大村記念公園」~和をベースに知と癒やしの施設が並ぶ市民憩いの場

「韮崎大村記念公園」(山梨県韮崎市)は、韮崎大村美術館や白山温泉、古民家のセミナーハウス、茶室(予定)など、知や癒やしの施設が並ぶ市民憩いのエリアです。

韮崎市と、大村智博士が名誉理事長を務める韮崎大村財団が整備を進めています。

韮崎大村記念公園
韮崎大村記念公園のマップ


今回はこの韮崎大村記念公園をご紹介します。新緑が始まる季節、散歩がてら訪れてみてはいかがでしょうか?

2015年にノーベル生理学・医学賞を受賞した日本の科学者。韮崎市名誉市民。
土壌などの微生物から新しい化合物を500近く発見、そのうちの25種が医薬、動物薬の分野で実用化。なかでもイベルメクチンは、アフリカや南米など熱帯地方の寄生虫感染症治療薬として、これまで10億人以上を救った。
女子美術大学の名誉理事長も務め、絵画など美術にも造詣が深い。

1.韮崎大村美術館

韮崎大村美術館
韮崎大村美術館


韮崎大村美術館には、日本近代から現代にかけて活動した女性作家の絵画を中心に陶器や彫刻など4,000点以上の作品が収蔵されています。大村智博士が40年もの期間をかけて収集した自身のコレクションと美術館の建物を韮崎市に寄贈、2008年に市営になりました。戦後の洋画界を代表する鈴木信太郎の常設展示もあり、これを目当てに遠方から来る方も多いと聞きます。

2階には展望室があり、セルフでコーヒーも飲めます。大村智博士が幼少から慣れ親しんだ地元の南烽火台からの美しい眺めを再現しようと、博士自ら展望室の位置と高さを決めたそうです。その甲斐あって、富士山や八ヶ岳、茅ヶ岳の眺望は圧巻。大パノラマに身を任せ、休憩を挟みながらゆったり芸術に触れることができます。

韮崎大村美術館からの眺め
韮崎大村美術館、2F展望室。パノラマが広がる

韮崎大村美術館からの眺め
取材日、八ヶ岳がきれいに見えた


取材日は晴れていて、八ヶ岳がきれいに見えました。 韮崎大村美術館は、ふじのーとでも以前取材に訪れています。詳しくはこちらから。

韮崎大村美術館
〒407-0043 山梨県韮崎市神山町鍋山1830-1
http://nirasakiomura-artmuseum.com/

2.武田乃郷 白山温泉

白山温泉
和の造りで迎える白山温泉


白山温泉は内風呂も露天も天然掛け流しで、45.5℃の高泉温が毎分220Lと豊富に湧出し、泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の弱アルカリ泉です。

玄関や露天の屋根など、随所に見られる和の造りが温泉の安らぎを深めてくれます。

露天に入って自然な角度で夜空を見上げれば、南アルプスの漆黒にきらめく星々が、ここが山梨でも日本でもなく宇宙の中なのだと実感させてくれます。

休憩室や30名収容のセミナールームも完備、絵画など多くの美術品も展示され、ここでも美術館同様、芸術をゆったりとした気分で味わうことができます。

武田乃郷 白山温泉
〒407-0043 山梨県韮崎市神山町鍋山1809-1

http://www.hakusanonsen.com/
goriyouannnai.html

3.そば処、上小路

おそばやさん
そば処、上小路。観光がてら立ち寄る方も多いそう


韮崎大村美術館のすぐ横にあるそば処、上小路。コシのある本格そばが人気です。

近くには「武田八幡宮」や「ワニ塚」など人気スポットがあるので、観光がてら立ち寄る方も多いそうです。山梨・長野は登山が人気ですが、県外の方が下山のあとに温泉とセットで立ち寄ることも多いそうです。

白山温泉同様に多くの絵画が展示されております。

そば処、上小路
〒407-0043 山梨県韮崎市神山町1809-1
http://www.hakusanonsen.com/
kamikoji.html

4.螢雪寮、ミーティングルームぜんぽう

螢雪寮
螢雪寮(左)とミーディングルームぜんぽう(右)


螢雪寮とミーティングルームぜんぽうは、大村智博士の生家を改築し、セミナーハウス(螢雪寮)やシェアキッチン(ぜんぽう)として一般に開放している施設です。

地域の集い、趣味や学びの場などさまざまな目的でだれもが利用できます。こういった上質な施設は利用料金が高いのが一般的ですが、螢雪寮は低価格で利用可(下記)。さらに、移住を検討される方の山梨・韮崎体験、短期滞在施設としても利用できます。

太い古材が落ち着いた雰囲気を醸しだし、その一方で今風のスタイリッシュな内観と設備。仲間や家族と訪れれば、充足感のあるひとときを提供してくれそうです。

蛍雪寮は大村智博士の生家。大村智博士が大学生のときこの韮崎の実家から山梨大学まで徒歩で通ったこともよくあったとか。その距離、片道およそ16km!
セミナーハウス
ミーティングルームぜんぽうの外観

セミナーハウス
ミーティングルームぜんぽうの内観

シェアキッチン
ぜんぽうのシェアキッチン。料理教室などプロユースの活用も多い

韮崎の古民家
螢雪寮の内観。太い梁と柱、それを照らすオシャレなペンダントランプ

シェアキッチン
螢雪寮にもキッチンや冷蔵庫も設置されていて短期滞在できる


蛍雪寮・ミーティングルームぜんぽう
〒407-0043 山梨県韮崎市神山町鍋山1880-1
https://www.nirasaki-kankou.jp/
kankou_spot/kouen_bijyutsukan_
shiryokan/rental/6639.html


【利用料金】
・営利又は宣伝を目的としない(4時間まで) →韮崎市民500円/市民以外1,500円

・営利又は宣伝を目的とする(4時間まで) →韮崎市民1,500円/市民以外4,500円
プロジェクター・スクリーン・音響機器の利用も含まれております。

5.創新苑

韮崎の庭
雑木がその花と葉で色をつける素敵な庭園


創新苑は石の造形で趣向が凝らされ小川がせせらぐ庭園で、蛍雪寮の敷地内にあります。

松やケヤキなどの太い木は見あたらず、石と雑木が主役となっています。そのおかげで繊細で奥深い趣(おもむき)が醸し出され、南アルプスと地続きの風光明媚な景色が人の心をひきます。

2022年4月現在はまだ造成中ですが、もうすぐ完成予定です。完成したら、市民や観光客を大いに癒やしてくれる憩いの場になりそうです。

韮崎の古民家
雑木に囲まれた古民家の落ち着いた佇まい


雑木に囲まれた古民家の落ち着いた佇まい 以上、韮崎大村記念公園のご紹介でした。

最後に、韮崎大村記念公園へといざなう小径(こみち)をご紹介♪

6.幸福の小径

甘利沢川沿いに続く公園(甘利沢川さくら公園)を通りぬけて韮崎大村記念公園へとつながる「幸福の小径」は、博士のノーベル賞受賞を記念して命名・整備されたものです。

川沿いの斜面に位置するため、富士山や南アルプス、甲府盆地、秩父山系の眺望が良く、空は広く、四季折々の風景や雲の形を楽しむことができます。

取材したのは春先、咲き始めた桜のピンクが小径の在りかを教えてくれました。もう少しすれば、タンポポ、レンゲ、スミレといった土着の草花が小径をさらに彩ります。

桜が咲き始めた「甘利沢川さくら公園」と「幸福の小径」
「甘利沢川さくら公園」とそこを通る「幸福の小径」。咲き始めた桜のピンクが小径の在りかを教えてくれる

大村博士の業績を伝える碑
大村博士の業績を伝える碑

公園の彫刻群
幸福の小径に設置されている作品配置マップ(韮崎市まちなか美術館パンフレット「幸福の小径を歩いてみよう!」より)


公園には、9名の作家による9つの芸術作品と大村智博士のブロンズ像が設置されています。芸術と聞くとなんだか高尚なイメージがありますが、ここでは通学や散歩など日常の中にアートがあります。どんな天気でもどんな気分でもそこにある作品が、市民に柔軟な視点や着想のきっかけを与えてくれそう。

ちなみに、たまたまですが、北杜市在住の筆者はこのマップのコースをランニングするのが習慣です。ときに作品を横目で見ながら夕方にだいたい3往復。
そのコースでのランニングを始めて何年か経ったころ、ふとこの9つの作品が1つにつながる感覚が生まれたことがありました。作家が違い意図も違うので、作品同士に一貫性はないはずですが、とある女性の順風ではなかったが逞(たくま)しく過ごした人生が、パッとフィルムで見えたような気持ちになりました。

またあるときは、ニケという作品(マップの8番)の横を通ったときのことですが、ふと強い感情がこみ上げてきて思わず立ち止まり、そのまま像の前に立ち尽くしたことがあります。目頭が熱くなり、そうなった自分に驚きました。何百回もそこを通ったのに、そういうことは初めてでした。薄暗い中でわたしは確かに何かを疑似体験し、ふわーといろんなことが分かった気になったのです。

何を疑似体験したか、何を分かった気になったのか・・・それはうまく説明できないのですが。

ニケ_津田裕子
ニケ-2018(津田裕子)


その作品の、あばらに見えて蛇腹(じゃばら)、羽ばたいているように見えて風に吹きすさびれてのけぞっているような格好。これは悲しい作品なのか、喜びの作品なのか、勝利を意味するのか、それとも敗北か。あるいはそういった価値感の枠の外、宇宙にあって生命の構えのようなもの?何もわからないのに全部わかる、何も受け取ってないのに全部受け取った。そんな不思議な感覚を薄闇の中で感じたのです。

津田裕子

7.芸術とはなにか?

絵画、彫刻、小説、音楽、映画など、わたしたちに身近な芸術

その意味は人それぞれでしょうが、自分の誇りを持ち続けるための外部刺激と見ることもできます。ちょっと気を抜けば自分の誇りはまるで埃のようにどこかへ飛んでいってしまうこの世界。

美術研究家、坂崎乙郎はその著書「絵とは何か?」(1983)の中で、「絵とは感覚である」と書いています。画材や技法など物質的なことはあるとして、しかし絵の本質はそこに立ち上がる作家の感覚、と書いています。

その感覚を具体的に立ち上げるために作家は何万回も同じ作業を続けたり、できた形をあっけなく捨てたりするのでしょうが、そうしてできた形の迫力はもはや作家自身にも合理的に説明できるものではありません。

すべてがそうなるわけではありませんが、ときに作品はわたしたちの心に作用してイメージを結像します。きれいなものだけではないはずです。きたないものやうれしいものやわくわくするものやざんこくなもの。自分がそれまで考えもしなかったようなことを、ふとあるとき疑似体験し、そこから前向きな感覚が生まれる。それが芸術でしょうか。

芸術とは?
芸術とは?(一例)


作品が作家の手を離れたらあとはどう解釈されてもいいという基本的自由が存在します。だからこそ、芸術は有史以前から人類の心のよりどころとしてあり続けたのでしょう。芸術は人類が初期に発見したデモクラシーなのかもしれませんね。

ちょっと横道になりましたが、「芸術」を起点に学びや交友、憩いの場が整備されている韮崎大村記念公園。そこで著名な画家の絵を楽しんだり、温泉に入ったり、古民家で仲間と時間を過ごしたり。ぜひ一度訪れてみてください。

written by ヒノキブンコ

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