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James Barnes Vol.2 (Interview with world composer Barnes)

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James Barnes 独占インタビュー

ーーー バーンズさん、ようこそ、山梨へお越しくださいました。山梨は初めてですね?ワインやフルーツ、ジュエリーなど何か山梨らしいものは体験されましたか?

バーンズ (以下B):

日本には少なくとも30回は来ていますが、山梨は初でしょう。私は、アルコールは摂らないんだけども、日本の中でもワインが有名な土地であることは知っているよ。富士山は山梨にくる途中に見ました。まさに素晴らしい!としか形容しようがないけれど、あんなに素敵な山を毎日見られるあなたたちが羨ましい限りです。

ーーー 今回は尚美ミュージックカレッジ専門学校の在学生による初の山梨公演ということですが、アメリカと日本の学生とではどのような違いを感じられるでしょうか?吹奏楽に携わる者としての視点も伺いたいです。

B:

私が思うに、大きく違いますね。環境そのものが違う。何しろアメリカの学生はスポーツに熱心だ。例えば私の息子は学生時代、素晴らしいトランペット奏者でした。父である私がミュージシャンになることを勧めたことは一度もなかったけど、とてもよく頑張っていた。野球もフットボールもやりながら、音楽もやっていたわけです。わかりますか?全部全力で取り組んでいました。今はマーケティングオフィスに勤務して頑張っていますがね。日米の学生の違うところ、、、そうだなぁ。とにかくスポーツにものすごい力を入れている、という印象はあります。そう言えば、最近では特にサッカーに対しては並々ならぬパワーを感じますよ。アメリカがサッカーに取り組み出したのは他の国に比べて遅いかもしれないが、今は本当にたくさんの子供たちがサッカーをスタートさせている。今後20年はアメリカのサッカーが台頭してくるんじゃないだろうか!私はとても期待してますよ。

 音楽について言えば、学生時代は、とてもたくさん時間があるから練習はできても、いざ卒業したとなったらそうはいかない。その点は日本人も一緒ですね。印象深いのは、日本の音楽関係者と話をする中でこういった会話です。「なんでこの日本人バンドは、こんなにも上手い連中が揃っているんだ?」と聞くと「私はずっと音楽の授業で演奏していました。」「音楽を専攻していました」などの返答に加えて、一番驚くのは、ほとんどの学生が自分の楽器を持たないまま、学生時代はクラブ活動などで演奏しているということです。小さなパーカッションでさえも学校のものを使ってるだって?一体どういうことだ?じゃあどうやったら生徒たちは、そんなに上達できるんだ?そう、言葉を選ばず言うなら、日本の学生たちはとにかく練習しまくっている。それも信じられない位ね。その点、アメリカの生徒はあまりにも多くのことをやりすぎているかも知れません。スポーツはもちろん、スマホゲームも物凄いするし、楽器の練習といえば一日に2時間もやればいい方だ。それもそう、楽器の練習は学校の授業中にやるんですから。

ーーー 日本の音楽関係の学生も中には音楽と同じくらいゲームに夢中の人もいるかも知れませんが(笑) それでも確かに日本の吹奏楽部の学生は、スポーツ系の部活よりも学生時代の練習量は多いと言っても過言でもないかも。ほとんどの中学校や高校でも、校門が閉まるギリギリの時間まで音楽室から音が聴こえて来たことを覚えていますし。

B:

そう、日本の学生(ここでは主に専門・大学を指す)は授業以外の放課後に夜までやったり、土日にも練習したりするでしょう。本当に感心させられます。アメリカでも時間を決めて効率よく練習することによって素晴らしいパフォーマンスをするバンドは沢山いますが、この練習に対するマネージメントの違いは面白いね。



音楽だけではなく色々なことに挑戦する事。それが人間としての表現力や説得力になる。

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ーーー なるほど、今度は逆に共通しているところは?

B:

これはアメリカも日本も他の国も同じことだけど、とにかく良い先生に恵まれるか否か、結局はここに尽きてしまう。どんなに素晴らしい才能を持っている生徒がいても、どんなに練習熱心なバンドが居ても、マネージメントする張本人である先生が教鞭を振るにふさわしくない人物だったら意味がなくなってしまう。「良い指導者こそが良い音楽を作り、悪い指導者が悪い音楽をつくる。」マネージメントや環境が違っても、これは万国共通だと私は思って居ます。

ーーー そこから見えてくる、バンドに所属する演奏者が心がけた方が良いと思うものとは?

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B:

日本の吹奏楽バンドシーンはその運営方法も素晴らしい方法をとっていると思います。コンクールの取り入れ方にしてもね。もちろん、アメリカでも同じような仕組みがありますが。ただ、吹奏楽に全てを費やすのではなく、スポーツや他の勉強もしっかり取り組むべき。大人になってからの説得力も変わり、表現力も豊かになる。練習熱心なのは素晴らしいことですが、多くのことから学び取り、感じる姿勢は忘れずにキープしてほしい。アメリカの学生は多くのことをやっているのかもしれないが、その分、感受性は豊かだとは思う。何事もバランスですよ。ゲームのやりすぎには関心しないけれどね(笑)



自分の心を信じて、ストレートにクリエイトしていく。

ーーー 今回の山梨公演の演目にも入っている「交響的序曲(Symphonic Overture)」を聴かせて頂きました。大変素晴らしい、まさにマスターピースとも言える作品ですね。

B:

あれは私がアメリカ空軍バンド50周年の記念作品として書いた曲です。1990年ですね。随分と昔のことだからエピソードを聞かれても困るんですがね。まぁ覚えているといえば、、、確かこの作品には、最初少なくとも3ヶ月はかけたと思います。ある時ピアノの前に座ってレビューしていたら、どうにもこうにもしっくりこないときがあってね。その場で書き途中のスコアをぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に捨ててしまった。結局その後、ゼロから作り直して、2週間で仕上げたことはよく覚えていますよ。

ーーー 2週間!あの作品を!

B:

そう。作り途中のものを捨てて、1からやり直すというのは結構良い結果を出したりするんですよ。音楽にとってある種重要なポイントというのは、「もっと良くしよう」「ここやあそこをこういう風に修正して...」のような姑息なことは考えずに、自分の心を信じてストレートにクリエイトしていく。これが素晴らしい芸術を産む一つの秘訣だと思いますよ。演奏会をする度に「この曲のエピソードは?」と良く聞かれますが、あまりにも沢山の曲を書いてきたものだからそんなに一つ一つ覚えていないんです。30年前の事よりも、今とこれからのことの方が遥かに大事だと思っていますからね。

ーーー では、総合的に聞きたいんですが、あなたの作曲において一番重要な事とは?

B:

メロディ。全てはメロディです。ものすごく難解なコードやハーモニーを作る人もいますが、私の考えとしては、最も音楽にとって重要なメロディをそれらは壊してしまっている。「如何に難解であるか」を求めている人とはなかなか意見が合わないのは残念ですが、メロディがない音楽は誰もが理解出来ないと思っています。そう、誰もが理解出来ないとせっかく生まれた音楽があまりにも勿体ない。聴衆が理解出来てこその音楽です。考えてみてください。例えばショスタコービッチやストラヴィンスキー、ヒンデミットにしても、現代でも高く評価されている作曲家たちは皆、素晴らしいメロディを作品に吹き込んできた。あなたも「春の祭典」を良くご存知でしょう。本当に素晴らしい。



素晴らしいオーケストラは、ストーリーをも聴かせる。

ーーー 屈指のメロディメーカーであるあなたが言うと、とても説得力があります。伝える、という意識も込めた上で、メロディが最重要と。

B:

「どんな素晴らしいミュージシャンや指揮者よりも、作曲家に課せられる責任が一番大きく難しい。コンサートのステージのファーストインプレッションで人を感動させる事が出来ないのならば、その作品は失敗だ。」これは私の作曲の師匠にあたる人が言っていたことです。作曲家として世間に立つ以上、一人でも多くの人を魅了する作品を作らなければならない。ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を多くの人が知っているのは、元々の素晴らしいメロディがあるからでしょう!(バーンズ氏にもリストやラフマニノフと同じく、代表作に"パガニーニの主題による幻想変奏曲"がある。)

 TVや映画でも頻繁に流れているし、曲名や作曲者を知らなくても、大半の人はあのメロディを知っている。こんなに素晴らしいことはない。これは私の作曲クラスの生徒にも言っていることですが、世の中には2種類の作曲家しかいないんです。素晴らしいメロディを書く者。そして音楽理論者です。本来なら後者の皆さんもメロディを書こうと思ったら出来るはずなんです。人に聞かせるためのものならば、人の心に訴えかけるメロディを生み出すべきだ、と私は常に思っているんですが、理論至上主義という傾向が一部にあるのはとても残念には思っている、というのが正直なところですね。

ーーー あなたの作る全ての作品にはメロディ以外にも、ストーリーが見えて来ます。

B:

そうですか、ほぼ全ての作品に?それは嬉しい言葉です。ただ言い換えるならば、「美しいメロディを内包している作品は、ほぼ全てと言って良いほど、聴く人に様々なストーリーや景色を魅せる」と言った方が正しいでしょう。ワーグナーを聴けば、目の前にオペラが見えるでしょう。素晴らしいオーケストラは、ストーリーも聴かせるのです。その人それぞれの想い出や願いも重なってね。

ーーー 本公演は尚美ミュージックカレッジの学生たちに加えて、地元山梨県の吹奏楽部の生徒たちもバンダ(※)として参加しますね。

(※バンダ=オーケストラなどで、主となる本来の編成とは別に、多くは離れた位置で「別働隊」として演奏する小規模のアンサンブル。ステージ袖や、ステージのせり出しで演奏することも多い)

B:

そう、リハーサルもとても上手くいきました。山梨から選抜された素晴らしいキッズプレーヤーが揃ってくれました。彼らが参加する「交響的序曲」の本番は、きっと素晴らしいものになりますよ。それも大音量でね!

ーーー 最後に、地元山梨の方に向けてメッセージを。

B:

今回はこの素晴らしい土地で、そしてこんな素晴らしい公演に関わることが出来て感謝しています。この尚美ミュージックカレッジのバンドは私が今まで指揮をして来た中でも3本の指に入るほど素晴らしい。信じられないポテンシャルを秘めているよ。もしまた私がコンサートを日本でやる機会があれば、ぜひお越しください。

Article written by New Attitude

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