ページ内を移動するためのリンクです

若者言葉「草」とは?〜その用法や語源について

SNS上で「草」に遭遇して戸惑ったことはありませんか?ここでは草の意味や使い方を解説します。

草とは?

「草」は、文末につける「(笑)」や「w」と同じ意味です。 「笑える」「おもしろい」という気持ちを表すもので、SNSでのやりとりやコメントでよく使われます。

kusa-wara_01.png

「当初は、「笑(wara)」の頭文字をとって「w」「wwww」が主流でしたが、これを草が生えている様子に見立てて「草」が多く使われるようになりました。

草の使い方

草の使い方は難しくありません。面白いときに草をつければOK。SNS上で気になったちょっとした仕草や失敗、独特の癖が面白いと感じたときにもよく使われます。

ただし、草という表現はカジュアルなシーンに限定されます。フォーマルな場面やビジネスシーンでの使用は控えた方がいいでしょう。また「草」が浸透していない世代の方に使うのもおすすめしません。かえってコミュニケーションの円滑さを損なってしまうかもしれません。

一般例
「この動画、語り口がシュールで草」


応用例
「草生える」「草生えた」・・・主体的なニュアンスを高める
「草www」・・・wと組み合わせて強調する
「草すぎる」「大草原」・・・草だけでは足りないくらい面白いと伝える

なぜ草が生えたか?

ネット上では、「笑」→「wwww」→「w」→「草」の順に多く使われていますが、ダントツで「草」が多い結果に。

(生成AIによるSNS上での検索結果。1分間あたりに見つかった件数で比較)


なぜ「草」が多く使われるようになったかについては、まずは入力のしやすさがありそうです。スマホのフリック入力で、画面中央部での2回の操作で出せます。笑も同じく2回で出せますが、「わ」も「ら」もスマホの下側を操作しなければいけないため、親指に無理な動きを強いてしまい、スマホを落とすリスクも高まります。

また「笑」にはやや古くさい印象があるのも否めません。むろん「草」だって、時代が変われば古くなるかもしれませんが、少なくとも今は若者のセンスに適っています。

草の心理作用

若者がSNSでのメッセージ投稿の文末に「w」や「笑」や「草」を入れるのには、心理学的な動機があります。

それは感情調整と呼ばれる、感情のトーンを和らげるという心理的な作用です。直接声のトーンが届かないテキストでは声や表情の軽さが伝わらないため、誤解が生じやすくなります。そこで、「本気で言ってるわけじゃないよ」「軽い気持ちだよ」と角が立たないように柔らかく相手に伝えたいという気持ちから、文末に調整文字を入れると考えられています。若者こそ自分の発言が相手にどう伝わるかに敏感なのかもしれませんね。

また、人は自分が周りから「気さくで話のできる人」「面白い人」と思われたい承認欲求があります(自己呈示)。ユーモアの印として、SNS上の自分の発言に「草」「笑」を添える、という見方もあります。

若者は、そんな心理学上の専門用語を知ってか知らずか、このような用法を自然に生み出すのは見事としか言えません。

外国にも、「haha」や「lol(laughing out loud)」や「笑死」など同様のスラングがありますが、これらは言葉のイニシャルをとって略した表現であることが多く、「草」のように比喩を挟んで言葉に意味づけるのは大胆です。

そこには、視覚的な表現を重視する日本文化が関係していそうです。絵文字や漫画もそうですが、日本には「見た目」から派生して詩的なニュアンスを帯びた表現が豊かです。

草は、臭いセリフなどの「臭い」と関連性はあるの?〜両者に見る言語進化のプロセス

筆者がはじめて若者言葉「草」に遭遇したとき、その響きから「きざ」「かっこつけてる」のような意味を連想しました。草は「臭いセリフ」などを意味する臭いと関連性はあるのでしょうか?草はそのようなニュアンスを含むのでしょうか?

答えは、いいえ。草は「臭い」のニュアンスを含んでいません。

ただし、どちらも一見突き放すようで好意的に受け止めている点、笑いを誘発するような用法である点、比喩を挟んで生まれたスラングである点では同じです。スラングの誕生プロセスにはどうやら共通するパターンがあるようです。


・「草」:「笑」→「w、wwww」→「草」
・「臭い」:「においが強い」→「鼻につく」→「臭い」


以上、「若者言葉、『草』について」の解説でした。「和をもって尊しとなす」そんな日本人の精神が生んだ言葉、それが草でした。

written by ヒノキブンコ

ページの終わりです