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半導体のことを分かりやすく解説。なぜ山梨で半導体関連企業が多いの?

ニュースなどでよく聞く『半導体』ですが、具体的にどのようなものかよく分からない方も多いかと思います。ここでは、半導体の仕組みや役割、また次世代半導体のことを分かりやすく説明します。

半導体とは?

半導体とは状況により電気を通したり、通さなかったりする物質のことです。

金属や水は電気を通しますが、ゴムやプラスチックは電気を通しません。半導体はその両方の性質を持っている素材です。ポイントはこの『電気を通す・通さない』を瞬時に切り替えられる点にあります。

具体的には、半導体に電気や磁場を加えることで、電気を通す・通さないを瞬時に切り替えることができます。ささいなことに見えて、大発見。ここに人類が目をつけたことで、技術が急速に発展することになります。スマホや家電、自動運転、航空技術、宇宙探査機・・・すべてに半導体が使われています。

『電気を通す・通さない』がなぜそんなに大事なの?半導体は何をしているの?

一部の新進のコンピュータ(量子コンピュータ)を除けば、基本的にコンピュータは「0」「1」の処理しか行っていません。これを2進数といいます。たった2種類の信号だけで、映像やソフトウェア、スマホのアプリ、映画、音楽、SNS、スーパーコンピューターは機能しています。

この「0・1」がちょうど「電気を通した・通さなかった」に相応し、通信、計算、制御を行っているのです。

半導体といっしょに知っておきたい用語にトランジスタがあります。トランジスタとは、電子回路で電気の流れをON/OFFに切り替えたり、電気信号を増幅したりする半導体デバイスのひとつです。回路のポイントポイントに配置され、そこで水門のように開いたり閉じたりして電気の流れをスイッチします。

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スイッチ(イメージ写真)

このトランジスタが、iPhone 14 Proなら一端末に160億個も入っていて、瞬時に膨大なデジタル信号を処理、伝達しています。つまり、チップやコンピューターは膨大な数のスイッチが詰まった装置といえます。そろばんの玉をパチパチと弾いて計算するのと同じく、スイッチで電気信号という玉を弾いて演算を重ねているのです。ただ、その速度が手で弾くそろばんとはワケが違うということになります。

一般に半導体と言ったとき何を指すか?

一般的に半導体と言ったとき、半導体の素材そのものというよりは、半導体デバイス(半導体素子)やICチップを指すことが多いようです。

半導体デバイスは、トランジスタ、整流器、サイリスタ、発光ダイオードのことです。ICチップ(集積回路)は、シリコン単結晶などの半導体基板の上に、トランジスタや抵抗器、コンデンサなどが配置された電子回路のことです。

半導体の素材

半導体の素材としては長年シリコン単体結晶が一般的でしたが、最近は物理的特性が優れる炭化ケイ素(シリコンカーバイド)や窒化ガリウムも多く使われるようになりました。ダイヤモンドも近年注目されています。

余談ですが、窒化ガリウムといえば、青色発光ダイオード(LED)の材料としてご存じの方もいるでしょう。赤﨑勇、天野浩、中村修二ら日本の研究者が中心となって、当時実現不可能の代名詞だった青色発光ダイオードを世界で初めて実現し、実用化に繋げました。この3名はこの業績で2014年にノーベル物理学賞を受賞しています。

半導体の種類、それが使われる身近な機器

半導体は目的ごとに何種類かに大別できます。もちろん、ひとつの機器が複数の種類の半導体を搭載することがほとんどです。

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アナログ半導体

アナログ半導体は光や音、温度、気圧などをデジタル情報に変換したり、制御する半導体のことです。カメラやスピーカー、イヤホン、ドローン、各種産業用センサーに使われます。

パワー半導体

電力を変換したり、高電圧をすばやく切り替えたりするための半導体です。LED電球や発電機、IHクッキング機、EV車に使われています。最近、日本の研究者がダイヤモンドを使った新しいパワー半導体を発見し、世界的に注目されています。

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メモリ(半導体メモリ)

情報を保存するための半導体で、USBメモリやSDカードなどに搭載されます。

ロジック半導体

CPU(中央演算処理装置)として搭載される半導体のことで、大量の情報をすばやく処理する「頭脳」「司令塔」としての役割を担います。パソコンやスマホ、ドローン、自動運転などに使われます。

次世代半導体について

日本は、これからの半導体産業で存在感を高めていくため、いくつかの次世代半導体の開発を進めています。

たとえばRapidus(ラピダス)です。Rapidusは、複数の企業(ソニー、トヨタ、デンソー、NTT、NEC、ソフトバンクなど)が出資し、日本政府(経産省)が助成する新会社名で、世界未到達レベルのロジック半導体の開発・製造を目指しています。2023年9月、政府はラピダスに対し3,300億円の追加支援を表明しました。

ロジック半導体はその電子回路の細かさがそのまま性能の高さにつながります。現在、量産される半導体の回路幅は4ないし5〜数十nm(ナノメートル、1nmは100万分の1mm)です。これを2nmまで狭めた半導体を2027年までに量産することをRapidusは目指しています。半導体の研究・設計で重要な特許を持つIBMと戦略的なパートナーシップを結んだこともあり、世界からその動向が注目されています。一方で、台湾や韓国の企業が2022年にすでに3nmの半導体を量産開始するなど、海外ライバルの状況も気になるところです。

これとは別に、日本でダイヤモンド半導体パワー回路(パワー半導体)が世界で初めて開発されました。これにより、電気自動車や発電機器、宇宙開発の分野で大幅な省エネルギー化、耐久性向上が可能になるとされ、こちらも世界的に期待されています。

山梨と半導体〜なぜ山梨に半導体に関わる企業が多いの?

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「金属精密加工や機構設計を行う株式会社土橋製作所(山梨県笛吹市)の様子」

実はここ山梨県は、半導体産業にゆかりのある地域です。半導体を製造する装置を作っている会社やその装置に必要な精密部品を作っている会社が多く所在します。なかでも、東京エレクトロンは国内トップの半導体製造装置メーカーで、世界の半導体製造市場の実に2割近くのシェアを誇ります。

また、電子産業が盛んな東京都多摩地区へのアクセスの良さも後押しし、機械電子産業の一大集積エリアに発展した経緯もあります。数値制御装置、数値制御ロボット、ウェーハプロセス(電子回路形成)用処理装置など複数の機械電子産業の分野で、山梨県は出荷額ベースで国内で高いシェアを占めます。

もともと水晶研磨など宝飾加工で栄えてきた山梨にあって、この土地に根付いたモノづくりの精神が、半導体・電子産業と親和性が高かったこともあるかもしれませんね。  

written by ヒノキブンコ

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