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河口湖音楽と森の美術館 (Kawaguchiko Music Forest Museum)

KMFM_01.jpg 日差しが気持ちのいい休日。心地のよい音と場所を探しに出かけてみませんか。山梨県富士河口湖町にある河口湖音楽と森の美術館は、山梨にありながらヨーロッパのクラシカルな雰囲気に満ちあふれています。リアリティーを追求するため、調度品や建物に使われている素材もヨーロッパ各地からお取り寄せ。すぐ近くに富士山を望みながら、まるで異国の旧市街を歩くような感覚が味わえます。
 石畳をたどり、園内と富士山を一望するカフェテラスで小休止。ここでしか見ることのできない、富士山とヨーロッパ建築の組み合わせを楽しみながら飲むコーヒーの味は格別です。河口湖音楽と森の美術館は至る所ですてきな音に出会うことができる場所でもあります。音を巡る歴史の旅へと誘ってくれるのです。

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音を巡る歴史の旅へ①~オルゴールヒストリー~

 今でこそ、クリックひとつで手軽に楽しめる音楽。しかし、音楽が大衆向けに開かれ、生活と密接なつながりを持つようになったのは、長い人間の歴史の中でつい100年ほど前のことなのです。
 オルゴール・オートマタサロンは、世界中から収集された数多くのアンティークオルゴールが展示、販売されています。高価なオルゴールが集められ、その歴史的な背景を音とともに知ることができます。実際に試聴することも可能です。
 オルゴールの語源はドイツ語、オランダ語におけるオルガンに由来していますが、アメリカではオルゴールを含め、自動音楽演奏機をミュージックボックスと呼びます。一般的にオルゴールというと小さな箱の中にシリンダーが付いており、突起によって金属鍵盤が弾かれることによって、澄んだ高音を奏でる様子を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。実際は大きさ、かたち、音色、その種類は多岐にわたっています。ピアノやバイオリン、ドラムスといった数種類の楽器が組み込まれ、オーケストラさながらの自動演奏を行うものもあります。そのようなオルゴールはどうやって作られ、どのような人たちに親しまれたのでしょうか。

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 シリンダオルゴールは1796年のスイス、ディスクオルゴールは1886年のドイツで生まれたといわれています。音楽は貴族などの特権階級がたしなむいわば贅沢な娯楽。現代においてもライブで音楽を楽しむのはロックであれクラシックであれ贅沢なものですが、オルゴールが生まれたのはまだ録音再生機器がなかったころのお話です。
 プライベートな場で音楽を楽しむには今とは比べものにならないほどお金と人の手が必要でした。貴族の人たちはその場に楽団を招致し、演奏をさせていたのです。歴史ものの王宮映画などを観るとよく描かれている光景ですね。そして何よりネックとなったのが、特権階級の人間は何かと秘密が多いということです。彼らは楽団を招いておきながらプライバシーの流出を恐れ目隠しをさせるほどでした。招待された楽団の心労は言うまでもなく、その都度、いちいち目隠しをさせる側も億劫になってきそうです。
 手軽に良質な音楽を楽しむことはできないだろうか――とそんなジレンマを解消するべく生まれたのが自動音楽演奏機オルゴールなのです。自動音楽演奏機の開発が活発となったのは、18~19世紀。高度な技術を持つ技師たちが知恵を絞り、腕を振るって取り組みました。オルゴールの原型はすでに17世紀に開発されていました。カリヨンという定刻を示す際に鳴らす鐘を、スイスの時計技師が改良したそうです。自動化機能そのものの歴史は紀元前までさかのぼります。
 オルゴールは現代でいうところの高級オーディオシステムのように、主に上流階級に親しまれました。また、ホテルや酒場、駅など公共の場所にも、コインを入れると演奏されるジュークボックスタイプのオルゴールが設置され、人々のにぎわいに一役買っていたそうです。河口湖音楽と森の美術館のオルゴール・オートマタサロンでも銅貨を入れてその音色を聴くことができます。銅貨がオルゴールの中に落ちる響きも含めて楽しんでみてください。KMFM_04.JPG

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音を巡る歴史の旅へ②~新しい音楽機器の台頭と音楽の民主化~

 1階で音楽文化が普及していく歴史をたどったら、2階のメインホールへと進んでみましょう。扉を開けると、それまで見たものよりも大きく重厚な自動音楽演奏機が並んでいます。自動演奏とともに、演奏機にまつわるヒストリーを専門のナビゲーターがガイダンスしてくれます。舞台に楽団は立ちませんが、オーケストラの自動演奏を劇場さながらのメインホールで鑑賞するのは貴族になったような気分になれます。
 良質な音の追求は、デジタル音源となった今でも根本的には変わりません。当時の技術者たちは人の手による強弱まで再現しようと開発に取り組みました。人間による楽器の演奏は、呼吸が肝心だといわれることがあります。同じように、ミュージックロールと呼ばれる譜面が組み込まれ、ポンプによって空気を送り呼吸を再現するかのような絶妙な自動演奏を可能にしました。
 メインホールにある1台の自動演奏機にタイタニックモデルと呼ばれるものがあります。沈没したタイタニック号に搭載される予定だった代物です。完成が出航に間に合わず、代わりに乗船したオーケストラの楽団は命を落としてしまうという悲劇と奇跡が重なって現存しています。今でも河口湖音楽と森の美術館で263本のパイプとドラムスを響かせています。

KMFM_06.JPG 同フロアには、オートマタと呼ばれる自動演奏の人形、模型コレクションも見ることができ、日本でお目にかかれるのは珍しいそうです。造形の細かさだけでも一見の価値があるほど精巧に作られ、時間になるとにぎやかな音楽を愛らしく奏でてくれます。
 隣の建物のオルガンホールでは、その名の通り幅13m、高さ5mの巨大な自動演奏オルガンが設置されています。宮殿のような佇まいに加えて左右両側の壁に立つ43体の人形もオルガンの自動演奏に合わせてコミカルに動き回ります。これは、ダンスホールに設置されることからダンスオルガンと呼ばれています。
 オルガンホールでは機械ではなく生身のパフォーマーが主役。バイオリニストとピアニストがサンドアーティストとともに、砂の物語を披露してくれます。砂によって即興で物語の場面を次々に描き、シーンに合わせて奏者が生演奏するといった人の手によるライブパフォーマンスです。さすがに現代の技術をもってしてもこのようなパフォーマンスの自動化は、この先も実現不可能なのではないでしょうか。描き出される情景と奏でられる音楽に思わず魅入ってしまいます。
 技術の進歩と音楽のニーズにより発展してきたオルゴール。しかし、1929年、世界同時不況、世界恐慌の風が吹いたことでオルゴールをはじめ高級自動音楽演奏機の開発は影を潜めることになります。代わりに、新しい電子機器の登場が音楽文化の大衆化に拍車を掛けました。電波放送のラジオや、録音技術を活かした蓄音機が台頭し、以降素材も安価なアナログレコードが人々に普及していきました。

KMFM_07.jpg オルゴールを始めとした、アンティークの自動演奏装置にフォーカスしたコンテンツが満載の河口湖音楽と森の美術館。人と機械のかかわりを目の当たりにすることで、音楽を聴くときに新しい視点や気付きを与えてくれるかもしれません。
 「円熟」という言葉しかり、熟成されたビンテージのワインやウイスキーの味の表現に「丸い」という言葉が用いられることがあります。長い年月をかけて川を転がる石のように、角が取れて丸みを帯び、滑らかになることを表現しています。目には見えない音も同様、時間をかけて磨かれた美しい音色はアンティークオルゴールにしか鳴らすことのできない音です。レコードが生まれるよりも前、音楽文化の源流を巡る休日は、心に豊かさをプレゼントしてくれるでしょう。

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Article written by VALEM co., ltd.

河口湖音楽と森の美術館
〒401-0304 山梨県南都留郡富士河口湖町河口3077-20
TEL:0555-20-4111
※詳細はこちらを参照してください。

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