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MaaSとは?シームレス?日本の都市と地方をどう変える?「やまなし観光MaaS整備事業」始動

最近注目されつつある「MaaS」。人は毎日、『出発地と目的地をもつ移動』を繰り返しますが、そんな社会基盤をMaaSはどう変えたのでしょうか?日本の都市と地方をこれからどう変えるのでしょうか? 今月から実証実験が始まった『やまなし観光MaaS整備事業』の内容も交えてMaaSのことを解説します。

MaaSとはなにか?

MaaSとは、「Mobility as a Service(モビリティ アズ ア サービス)」の略で、マースと読みます。 スマホやクラウドなど情報通信技術を活用して、旅行・通勤など『出発地と目的地を持つ移動』において自家用車以外の全ての交通手段(電車、バス、カーシェアリング、タクシー、シェアサイクルなど)を活かして利用者に最適な移動ルートを検索、さらに予約・決済まで簡単に完了させる、それがMaaSという考えです。今は交通機関ごと、運営会社ごとに個別に予約や支払いを行うのが当たり前ですが、MaaSはそれをシームレスにつないで、これまでの交通にまつわる概念を変えようとしています。

シームレス・シームレス化とは?〜すでにビジネスシーンや衣類に浸透

シームレスとはシーム(縫い目、継ぎ目)がないことを指します。 ビジネスシーンでは、業務効率化や顧客サービス向上を図るため『途切れない滑らかなシステム』を指してシームレス化と呼ばれています。垣根を無くす、よく聞く『縦割りに横の連携を』に関係する話でしょう。
衣類でもシームレスが話題となっています。例えば、ユニクロなどでは縫い目の一切ない下着を販売し、人気となりました。

なぜ、今MaaSか?

なぜ、今MaaSか?そこには理由があります。

レジャーへ出かける移動手段に車(自家用車)を選んだ時には、そこに継ぎ目はありません。つまり、車に乗ってしまえば、高速に乗ろうとトンネルを抜けようとシームレスに移動できるのです。昔なら高速代は現金払いでしたが、今やそれもETCで支払えます。躓(つまづ)くとしたら、道を間違えることくらいですが、これも今はナビやデジタルマップが強力にバックアップしてくれるので、車は目的地まで何も気にせずスムーズに移動できる手段となりました。

一方、公共交通機関は、SuicaやICOCAなどのキャッシュレス決済で支払いはスムーズになったものの、交通機関ごとに事業者が別々であるため、その接続地点で時間や手間を要します。例えば、特急の切符を買う、時刻表を調べる、空席を確認して事前に予約する、などが挙げられます。

「乗り換えの待ち時間、何しようかな・・・」それも旅の楽しみの一つですが、出発地から目的地までをまとめて「スマホさん、まとめてお願い!」ができたら便利になり、効率的な移動は環境にも優しいはずです。 そんな背景から生まれた概念がMaaSなのです。ポイントは『a Service』の『a』で、これは『一つのサービスです!』とアピールしています。

ICTとクラウド化で、運営会社を問わず一度に目的地までの必要な検索や予約が完了する社会が、スマホの普及、情報通信が整うことで現実味を帯びてきました。

MaaSのa

MaaSの対象は旅行に限らない〜地域課題も解決⁉

MaaSの対象は旅行や通勤だけと思われがちですが、実はそうではありません。地域住民の生活(買い物、医療受診、移動診療、交友など)も含みます。それが『出発地と目的地を持つ移動』ならすべてMaaSの対象です。 複数の公共交通機関を自動的に最適に繋げて、なおかつ予約や決済までを手軽に行えるようになれば、小型モビリティの細やかな活用も可能になる。そう言われています。小型モビリティとは、軽自動車よりも小さい電気自動車などです。 一人乗り、二人乗りなど小さなモビリティのオンデマンド運行、さらにはAI自動運転を組み合わせて、その地域でだれもが手軽に移動できる社会の実現をMaaSが目指しているなら、これは社会を変えうる壮大な構想と言えそうです。地方の高齢化、免許返納、買い物難民など地域課題を解決する可能性があります。 実際、MaaSで移動サービスが統合された先には、最終的には官民の政策統合が促されるとも言われています。MaaSがその国の政策をも進めるようになるのです。

MaaSとは
MaaSの構想

出典:国土交通省ウェブサイト 「日本版MaaSの推進」

MaaSのメリット

MaaSには以下のメリットがあると言われています。そのため、民間のみならず、自治体や国土交通省が国内でのMaaSを進めているところです。

利用者のメリット

・利用者が目的地まで最短ルートで行ける(AIなどで自動で提案)
・利用者の時間短縮、移動にかける費用の縮減(乗り換えの短縮、カーシェアやシェアサイクルの利用が進むため)
・都市部での渋滞緩和(自家用車利用者が減るため)
・過疎地や地方でマイカーのない人の移動手段の充実

安全面のメリット

・高齢者による自動車運転事故の減少

環境面のメリット

・温室効果ガスの削減(自家用車の使用が減るため。一人当たりの移動に要するエネルギーが減るため)
・都市部の大気汚染問題が軽減(自動車の排気ガスが減るため)

経済面のメリット

・外出機会の増加による経済効果、地域活性化(手軽に出かけられるようになるため)
・交通事業者の収入増加(自動車にかける費用が自動車以外の交通手段へ移るため)

MaaSの事例紹介〜フィンランドのMaaSがすごい

MaaSという言葉を生み出したのはフィンランドです。そのフィンランドの企業が世界初のMaaSプラットフォームを2016年に実用化しました。MaaSアプリ『Whim(ウィム)』を一般公開するとそのシェアを大きく伸ばし、2019年前後にはすでにヘルシンキで公共交通を利用する人の63%がWhim経由、一般利用の48%を上回りました。

Whimアプリは、利用者が出発時と目的地を選ぶだけでバス、電車、レンタカー、カーシェアリング、タクシー、シェアサイクルを組み合わせて最適ルートを自動で検索・提示してくれ、利用者がOKボタンを押せば、予約と決済がすぐに完了できるため、交通機関・運営会社ごとに個別に確認、予約、支払いをする必要がありません。

決済は都度決済のほか、サブスク、つまり『電車やバスが乗り放題プラン』、『全モビリティ乗り放題プラン』などを選ぶこともできます。すると、自動車を維持するよりもMaaSによる移動の方がメリットが大きいと感じる人が増え、自家用車を手放す人さえ出てきたと言います。実際ヘルシンキでWhimを利用する人のマイカー利用率は40%から20%に半減。 Whimはフィンランド以外でもベルギー(アントワープ)、イギリス(バーミンガム)、オランダ(アムステルダム)、シンガポールなど世界各国で導入が進み、日本でも実証的サービスが東京近郊を中心にWhimの提供をスタートしました。

フィンランドのMaaS
ヘルシンキの街並み(Pixabayより)

やまなし観光MaaS整備事業

Whimこそまだ来ていないものの、山梨でもMaaSを観光に活かそうとする動きが始まっています。 山梨県は『やまなし観光MaaS整備事業』を打ち出し、旅行会社JTBを事務局として山梨の観光旅行者に向けて、以下を目指しています。

1.電車やバス、タクシーなどの交通移動を一つのプラットフォームで結び、経路検索・予約・決済を簡単にする。

2.観光サービス(各種観光産業やフルーツ狩りやスポーツアクティビティなどの体験)との連携と予約を行うことができるようにし、キャッシュレス決済 ・観光スポット情報の提供まで行う。

山梨のMaaS
やまなし観光MaaSの整備

出典:山梨県 「やまなし観光MaaSの整備について」

以上、『MaaSとは?シームレス?日本の都市と地方をどう変える?「やまなし観光MaaS整備事業」始動』でした。MaaSが日本の地方と都市をこれからどう変えていくか、注目です!

written by ヒノキブンコ

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