会長・社外取締役による鼎談
──中期経営計画「V a l u e C r e a t i o n Company ~1st Stage」が進行中ですが、取組みや業績の進捗をどのように評価していますか。
関|中期経営計画の進捗は順調と考えます。財務指標を見ると、2026年3月期の連結ROEは4.48%に到達し、親会社株主に帰属する当期純利益も99億円と、中計最終年度の目標であった100億円を初年度にしてほとんど達成することができました。結果として、中計の目標を引き上げることになりました。また、非財務の観点でも、人的資本ROIやエンゲージメントスコアも目標に到達し、社会的インパクト指標に含まれるベンチャー・スタートアップ関連支援や金融教育も計画通りに進捗しています。
加野|当初は、中期経営計画で掲げたROEの目標は高すぎるのではないかと感じていた時期もありましたが、足元では当行の実力とポテンシャルに見合った水準に達しており、中計の先を見据えた成長の道筋も見えてきたと感じます。貸出金が好調に推移し、有価証券運用においても、ポートフォリオの改善が進み高いパフォーマンスを実現できています。
加えて、前中計から取り組んできた組織風土改革が、従業員のエンゲージメントの高さや組織としての団結力として表れてきていると感じます。新しい挑戦を積極的に行う文化が根付いてきていることが、中期経営計画が順調に進捗している大きな要因だと思います。
市川| 当行の長期ビジョンにおいて、「Bank」から「Company」への進化をめざし、民間企業でありながら「社会的インパクト指標」を目標に掲げたことは、非常に画期的なことだと捉えています。責任とリスクが伴う挑戦ではありますが、山梨の産業の発展に寄与する素晴らしい目標ですので、引き続き力強く推進してほしいですね。
──コーポレート・ガバナンスの観点から、現在の取締役会の実効性や内部監査の機能についてはどのように見ていますか。
加野|取締役会については、報告事項の整理や資料の見やすさ・分かりやすさの改善が継続的に進んでいます。事前に配付された資料を読みこんだうえで、当日は重要箇所の説明にとどめ、質疑応答や内容に関する討議に時間を充てられるようにすることで、重要案件に対する審議時間をしっかりと確保することができています。その結果、中長期的な戦略や経営課題に関する議論の時間が増えることで、取締役の発言量も増え、充実した議論ができているのではないかと思います。
市川|加野さんのおっしゃる通りで、議論に充てられる時間が増え、発言量も増えたことで、役員一人ひとりが決断に対して強い責任を感じ、十分な議論を尽くしたうえで決議に至っていると思います。「誠実性が当行の事業の根本である」という意識が取締役にも浸透しており、中期経営計画を策定する際にも、社外取締役が資料を深く読み込み、意見を出し合い議論を深めることができました。
関|取締役会の実効性については、お二人のおっしゃる通りと思います。第三者機関による評価でも、当行の取締役会の実効性スコアは、同業種他社の平均データと比較して高い水準にあるという結果が出ています。外部機関によるアンケート調査で見えた課題を運営に反映させ、重要なアジェンダをしっかり選定して議論を促す仕組みが定着し、着々と成果が出てい
ると感じます。
加えて、監査部には営業店から本部まで、当行グループ全体から網羅的な情報が集まってきますので、社内外の取締役と監査部との連携は実効性を向上させるために極めて重要です。今後は、監査部門の体制を拡充し、スタッフの専門性をさらに高め、経営との情報連携も今以上に密にしていきたいと考えています。
──人財育成や多様性の確保(DE&I)とった人的資本経営の課題にはどう向き合っていくべきでしょうか。
関|長期ビジョンを達成するうえでは、人財のポートフォリオのさらなる拡充が不可欠であり、特に従来の銀行業に捉われない多様な専門性を持った人財を増やしていく必要があると考えています。リスキリングや教育機会の提供、あるいは専門家の採用を通じて、幅広い分野のスペシャリストが活躍する組織になることが重要になります。
例えば、「山梨・東京コネクト」による情報連携の取組みを推進できる人財を増やすため、山梨県内の支店長を東京推進部に派遣したり、地区を跨いだ行員の意見交換会を実施したり、山梨と東京の双方向かつ様々な行員が膝詰めで議論する機会を設けています。また、コンサルティング営業においても、DXやサイバーセキュリティなど、新たなコンサルティングテーマを立
ち上げ、そこに挑戦する中で、新たな専門性を持つ人財の採用や育成が進んでいます。
加野|私も、山梨と東京の連携こそが当行の強みであり、そこを伸ばしていくべきだと考えています。そのためには、本部と支店、あるいは山梨と東京の間で人財の流動化を図り、両方を理解した人財が循環する仕組みが望ましいですね。
加えて、多様な人財が活躍できる組織になるためには、女性管理職比率の向上は引き続き課題であると考えています。支店長会議に同席した際、女性支店長も含め、後輩を引っ張っていこうとする熱心な姿勢に触れ、非常に頼もしく感じました。男性に比べ女性監督職の人数が少ない中で女性の管理職比率を上げることは簡単ではありませんが、中長期的な視点で
改善に取り組んでいきたいと思います。
──長期ビジョンでは、「社会的インパクト指標」も掲げています。収益の拡大と社会価値の創造の両立について、具体的な取組みやそこにかける想いをお聞かせください。
関|収益と社会価値の創造という観点で言えば、「シン・東京戦略」が特に該当すると考えています。特に、ウェルスマネジメントやスタートアップへのアプローチが成功していることが挙げられます。その上で、「山梨・東京コネクト」の成果も生まれています。例えば、東京のホテル事業者と山梨県内のホテルの空き部屋をマッチングさせ、体験型の宿泊施設へと転換した事例
があります。事業者にとっては体験志向の旅行客が増加し、地域のレストランやホテルにも収益が入るという、「Win-Win」の素晴らしい循環が生まれています。他には、スポーツイベントのスポンサーに都内企業を誘致できたことも、長期的な街の活性化と当行の収益につながる好事例だと思います。
市川|金融業界が変革の波に直面する中で、当行の理念である「地域密着と健全経営」を追求し続けることが最重要であると考えます。店舗運営の効率化を進めて稼ぐ力を高めることも重要ですが、地方銀行として過疎地の金融インフラを支えることも当行にとって重要な役割です。
当行では業務基本方針において、「小さくても勝てる会社」を目指すことを掲げていますが、その推進に当たり、AIの活用による業務効率化は大きな武器になり得ると思います。山梨は、他の都道府県と比べると人口規模では小さいかもしれませんが、地域経済の発展に貢献し、自身も成長できる組織であり続けることを目指したいと思います。その姿を発信することで、同じような取組みが他県の事業者や金融機関にも広がる流れをつくることが、当行のパーパスである「山梨から豊かな未来をきりひらく」の体現ではないかと思います。
関|地方における人口減少という厳しい環境は続きます。現在は金利上昇の恩恵を受けて収益が伸びていますが、将来を見据えれば収益の多角化が不可欠です。「Bank」から「Company」へとかじを切った背景には、そうした強い問題意識があります。グループ約1,600名の人財の能力を多面的に引き出し、マクロ環境が良好な今のうちに「Company」としての取組みを確固たるものにすることで、長期的に持続的な成長を遂げられるよう、力強く歩みを進めていきたいと思います。